365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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「海のしずく」という意味の学名の元になった美しい花。寒い冬の間も咲き続ける花は、庭づくりにおいても貴重な存在です。■属科・タイプ:シソ科の常緑低木
■花期:11月〜翌年5月
「海のしずく」に例えられる美しい青花に心洗われるよう…
スパゲティのポモドーロを作るとき、フレッシュトマトとにんにくのほかに、私の場合必ず加えるのがローズマリーです。少し野趣のあるローズマリーの独特な香りが加わるだけでトマトソースがぐんとおいしくなります。ラタトゥイユなどの煮込み、また肉のローストなどでも香りづけに欠かせないハーブとして、ローズマリーは広く利用され、ご自宅で栽培されている方も多いと思います。
小さな苗でよく出回るので宿根草と思われがちですが、ローズマリーは常緑の低木。年数が経つと茎が太くなって木質化してきます。そのため、個人邸やマンションなどの外周りの植栽でもよく利用されます。
とくにハーブとして広く認識されてからは、人気の低木となっていて、散歩の途中でもよく見かけるようになりました。スマートな葉が密に茂る個性的な姿は、植栽に変化をもたらすアクセントとなっていることが多く、姿もいいし、ハーブとしても利用できて羨ましいなと感じることもたびたびです。
そのローズマリー、青の美しい花がもう咲いていますよ。学名のローズマリナスはラテン語で「海のしずく」を意味しますが、それはこの花の色と形から名づけられたもの。小さな花ですが、澄んだブルーの花を見るといつも心が洗われるような気持ちになります。しかも、この時期から厳寒期を経て初夏の頃まで花が咲き続けるのはうれしい限り。冬の間は青花が少ないので、庭づくりでは貴重な存在となっています。
さて、ローズマリーには樹形が3タイプあります。枝がまっすぐ上に伸びる立ち性、枝が下垂して這うように伸びるほふく性、そして両方の性質を併せ持つ半ほふく性です。ご自宅の庭などに植える場合は、どのタイプが似合うかを考えてから苗を選ぶようにしてください。
散歩道でローズマリーを見つけた際にも、どのタイプかなと観察してみると、ローズマリーについてより詳しくなって楽しいと思います。
1月の花散歩で出会ったローズマリーは、花をこんなに咲かせていました。これはほふく性で、木の根元を覆うように低く茂っていました。栽培の難易度
地中海沿岸が原産地で、乾燥ぎみの環境を好みます。日なたで水はけのよい土壌に植え、過湿にならないように管理します。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はなく、水やりも雨まかせでかまいません。梅雨の前に株の内側の古い枝や、長く伸びすぎた枝を剪定し、風通しのよい状態にしておきます。初夏にはやわらかな新葉が出てくるので、どんどん摘み取ってハーブとして利用することで、切り戻しの代わりにもなります。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。