365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> アップ、中間距離、引き。同じ花を異なる距離感で撮ろう!
ひと目惚れしそうな鮮やかな赤いバラ。これは見かけたら絶対にアップで撮りますよね。フランスのメイアン社が作出した‘クリムゾンスカイ’ですが、赤バラにはたくさんの品種があるので、花のアップだけではあとで見返したときに品種名の確定ができない可能性も。・
第1回 美しく撮影できる天気・
第2回 美しく撮影できる時間帯・
第3回 美しい構図の探し方カメラマンの横田秀樹さんに教わる花の写真の撮り方、4回目は「距離感について」がテーマです。
きれいに咲いている花を見つけると、近づいてアップで撮影したくなりますが、横田さんの場合、アップだけでなく、中間距離、引きの構図と距離感を変えて少なくとも3パターンを撮るようにしているそうです。
3パターンの距離感で撮影する
・アップ:近づいて撮影
・中間距離:アップと引きの間、花茎が数本入る距離感の構図
・引きの構図:草姿や樹形全体が入る距離から撮ったもの
写真は必ずしも1点で表現するものではなく、何枚かの写真を組んで見せることで、対象をよりわかりやすく、より魅力的に表現できることがよくあるそうです。花そのものの美しさはアップで表現しますが、中間距離ではその花がどれくらいのボリューム感で、どのような葉と一緒に咲いているかがわかりやすく撮れます。
引きの写真ではその植物がどれくらいの草丈や樹高か、また株幅はどれくらいあるのかがわかりやすく示せます。また、撮影範囲が広がることで、周囲に咲くほかの花なども入り、季節感がわかりやすくなります。
こちらが‘クリムゾンスカイ’を中間距離で撮った写真。複数輪が咲く様子がとてもきれいな構図であると同時に、支柱にネットを巻いて絡めるように仕立てていることからクライミングローズだとわかります。たとえばSNSで写真を公開する場合でも、距離感の異なる写真を組み合わせて掲載すると、見ている人により明確にその状況を伝えることができます。
また、花の名前がわからず、あとで調べる際にも中間距離や引きの構図があると便利なのだそうです。中間距離の構図では、花がどのように花茎についているか、また葉の形状やつき方がわかり、引きの構図でわかる草丈や樹高も花名を確定するための重要な要素ですから。
お役立ち技!プレートをメモとして撮影する
もう一つ、植物園や観光ガーデンで花の写真を撮る場合のアドバイスですが、植物の近くに名前を記したプレートが立てられている場合は、それもメモとして撮影しておくと、検索する場合にとても役立つそうです。
ハーブとしても人気の高いアガスターシェのネームプレートには植物の特徴なども説明されていました。青ガエルちゃん、品種名の大事なところを隠さないで〜。移動したあとに確認すると品種名は‘ローズミント’でした。とくにバラやダリアなど品種が豊富にある花は、似ている品種も多いので、品種名がわかると短時間で検索できます。ただし、植え替えなどで位置が変わり、ネームプレートに記載の植物名と異なっていることもよくあるそうなので、あくまでも参考として考えてください。
4回にわたりご紹介した花の写真の撮り方を踏まえ、冬の間の花散歩でどんどん実践し、撮影のスキルアップを図ってみてください。きっと来春には花の写真がぐっと美しく撮れるようになると思います。
高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。