まずは薬物療法を試し、ポリープは内視鏡手術で切除する
副鼻腔炎は、耳鼻咽喉科医が鼻鏡や軽く麻酔をしてファイバースコープで観察するとすぐに診断がつきます。「鼻汁が分泌される上顎洞の中鼻道に膿が見えます。痛みのある検査ではありません」。
CT検査やX線検査で炎症やポリープの広がりを調べ、手術の適応かどうかをみることもあります。場合によっては鼻汁や鼻の粘膜を少量採取して、なかに含まれる細菌や真菌、免疫細胞などの種類を調べます。
急性副鼻腔炎は抗菌薬で治療します。「たいていは処方された内服薬を飲みきるくらいの期間で治癒します。抗菌薬の服用を途中でやめないことが大切です」。
一般的な慢性副鼻腔炎には、マクロライド療法が用いられます。マクロライド系の抗菌薬を半量ほど数か月飲む方法で、「マクロライド系抗菌薬には抗菌作用とともに免疫調節作用があり、それによって症状が緩和されていきます」。
好酸球性副鼻腔炎にはステロイド(副腎皮質ホルモン)の点鼻や噴霧が行われます。症状が重いときにはステロイドの内服薬も処方されますが、全身への副作用が懸念されるため、長くは使いません。
歯根の炎症が原因と考えられる場合には歯科治療が必要です。
粘膜が腫れて、あるいはポリープによって副鼻腔の鼻腔への開口部が狭くなっている場合はそこを開放して、副鼻腔内にたまっている膿を除去する手術を行います。「術後は鼻洗浄をして再発を予防します」。
手術は鼻の穴から内視鏡を入れて行うため、顔に傷がつくことはありません。全身麻酔の場合も局所麻酔の場合もあります。ただ、視覚障害などの合併症の懸念があり、手術の安全性を確保するため、日本鼻科学会では2020年に手術の指導医制度を設けています。
慢性副鼻腔炎の主な治療法
●マクロライド系抗菌薬を半量、数か月を目安に飲み続ける(マクロライド療法)。
●ステロイド(副腎皮質ホルモン)を点鼻・噴霧する。
●粘膜の腫れやポリープによって副鼻腔の出入り口が閉塞している場合は、内視鏡手術で切除する。