「長くて寒い冬に食材が不足するデンマークでは、保存のために発酵の技術や塩水に漬ける手法をたくさん使います。世界の料理人が、日本料理で使っているテクニックにインスパイアされているということをそのときに知りました。
しかし日本には、”和食”を出す店はあっても、日本料理のテクニックを使って新しい料理を提案しているところは案外ない。
だから日本料理を、自分たちのフィルターを通してプレゼンテーションしたいと思い、Kabiを作りました」と、安田さんは言います。
サンデーランチメニューより。マッシュルーム/発酵マッシュルーム/レモンドレッシング 800円。「Kabi」に潜入!コースの見所を紹介します
「Kabi」のディナー営業ではコースのみを提供し、コースはアルコールかノンアルコールのペアリングが選択できます。
この日のコースは、穴子のスープでスタート。口に含めば備長炭とトリュフのオイルが香り、さらにニラの香りづけで空腹感が刺激されます。
次に出されたのは、椎茸の天ぷら。一口でいただくと、口の中を満たすのは、むっちりと肉厚な椎茸のジューシーな旨味と、梅肉と豚の心臓を発酵させたパウダーの酸味とコク。
夜のコースより。椎茸の天ぷらには、梅肉のパウダーと、豚ハツをドライにしたパウダーが。夜のコースより。ここで供される器のほとんどは、種子島の陶芸家・野口悦士さんのもの。大根はキラキラと輝くスープに浸り、その輝きの正体は、発酵させたトマトやあさりの出汁、イチジクの葉のオイルでした。
全12品に渡って堪能した旨味の世界。忘れられない料理がたくさんありますが、ぜひ自分の舌で確かめてみてください。
1週間熟成させた佐賀産の鰆はウイスキーと白味噌のソースで。鴨のロースト、奈良漬と数種類のハーブを添えて。正直なことを言うと、実際に「Kabi」を訪れるまでは「発酵」というコンセプトが先行したレストランだと勘違いをしていました。
「コンセプトが先行するレストランは、一度行けばもう十分だろう」と、高を括っていたくらい。
しかし、全12品のコースを食べ終わる頃にはそんなこともすっかり忘れて、幸福な満腹感と日本料理の懐の深さに感動し、もう「いつ次の予約を入れられるか」と次回に思いを馳せるほど。