きものを上品に際立たせるデザインに宿る職人技
袋帯/桝屋髙尾独自の技法を駆使した高度な織技と感性が光る「桝屋髙尾」。代表的な作品である「ねん金綴錦(きんつづれにしき)」は、さまざまな色に染めた真綿糸に箔を巻きつけた金糸を使うことで、複雑な色合いを持ちます。
また太さに差異の出る手引きの糸が華やかな陰影を生み出し、多彩な金を表現しています。今回はそのねん金綴錦と刺繡の人間国宝・福田喜重氏の工房がコラボレーションして制作した袋帯が登場しました。
太鼓・胴部分の福田喜重氏デザインの葡萄唐草文様は、実を多くつける葡萄が子孫繁栄を象徴する吉祥文様。その他部分の長寿吉兆を表す子持ち亀甲文様の形は「桝屋髙尾」を象徴する吉祥文様となっています。
マットな金箔が使われているため、華やかながらも風雅に装うことも。卓越した伝統の職人技が生み出す、普遍的な美を宿す帯は装いを格調高く演出します。
秋の実り葡萄で、装いを旬に彩る
帯地の質感や風合いを損なわないよう、太鼓・胴部分はあえて刺繡加工せずに、箔に直接彩色する独特の技法を用いて作られています。
見る角度によって、金の見え方が変わる表情豊かな地紋は、「桝屋髙尾」のものづくりへのこだわりが生み出した賜物。
対比的に配置された葡萄と色づいた唐草のグラデーションが秋の風情を感じさせます。装う場面を選ばずに使うことができる万能で趣深い帯です。
※ねん金綴錦の「ねん」は「糸へんに念」です。
撮影/ケヴィン・チャン 撮影協力/相澤慶子
『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。