365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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キルタンサス・マッケニーでいちばん出回るのが淡いサーモンピンク。私が入手して長年楽しんだのもこの花色です。甘く優しい花色と、長い筒状の花形はいつまでも見ていたくなる魅力があります。(写真提供/PIXTA)■属科・タイプ:ヒガンバナ科の球根植物
■花期:11月〜翌年5月
■草丈:20〜40cm
スマートな筒状の個性的な花が春まで咲き続けます
南アフリカはさまざまな球根植物の原産地ですが、キルタンサスもその一つで、クンシランのような大型のタイプから、小型のユリのようなタイプまで、変化に富んだ原種が多くあり、タイプによって花期が異なります。
日本では、キルタンサスといえばマッケニーとその交配種が広く普及していて、それらが咲くのは冬〜春にかけてで、早いものは11月から咲き始めます。細長い筒状で先端が少しカールした花形がユニークで、その花形からフエフキスイセン(笛吹きスイセン)という和名もつけられています。
私が初めてキルタンサス・マッケニーを見たのは、東京のデパートで早春に開催された球根フェアでした。個性的な花形と淡いサーモンピンクの花色にひと目惚れし、開花株を購入して鉢に植えて育てたところ、とにかく花がよく咲き続けます。生産者の方に伺ったところ、花のピークというのはなく、ずっと咲き続ける性質なのだそうです。チューリップやスイセンなど球根の花は花期が限定されているものが多いなか、花期が長いというのはキルタンサスの大きな魅力だと感じました。
しかも、植えっぱなしで翌年以降も数年にわたり花が楽しめるうえ、よく増えるのです。3鉢くらいに株分けしましたが、いずれも冬の間もよく咲くので、切り花にして飾って楽しむこともできました。
そんなキルタンサスをご近所の散歩で見つけたときには、地植えでも冬越しして咲いていることに驚きました。お気に入りの花に散歩道で出会えるのはとても嬉しいことです。道端にしゃがみ込んで、しばし花を愛でさせてもらいました。
なお、キルタンサス・マッケニーには、淡いサーモンピンクの他、クリーム色や黄色、オレンジ色、赤などの花色もあります。
栽培の難易度
耐暑性は強く、耐寒性も比較的あるほうなので、温暖地であれば冬越しも可能です。球根の植え付けは春と秋にできますが、春のほうがその後の生育がよくなります。日なたで水はけのよい土壌に植えつけます。花壇に植える場合は元肥はなしでかまいません。夏季に休眠することが多いので、水やりは控えめにします。完全にストップすると秋からの生育に影響するので、乾かしぎみに上手に管理することがポイント。植えっぱなしで長い年数が経過した株には、花後に緩効性肥料を施します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。