365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> オオシラビソ
スコットランドのエジンバラ王立植物園で出会った青い松ぼっくり。正確には紫寄りですが、これはもう「青い」といってよい色だと思います。低い位置についていて、アップで写真を撮れたのはとてもラッキーでした。■属科・タイプ:マツ科の常緑高木
■松ぼっくりの観賞期:7月〜9月
なんて神秘的!青い松ぼっくりがつくモミの木
リースやツリーの飾り、またギフトラッピングなどで、松ぼっくりをよく見かける時期です。大きいもの、小さいもの、細長いもの、ふっくらしたもの、と松ぼっくりは木によって形もさまざまですが、青い松ぼっくりがあることをご存じでしょうか。マツ科モミ属のオオシラビソという木の球果です。
この木は日本の中部地方から東北地方の亜高山帯に分布し、松ぼっくり=球果が青く染まるのは7月〜9月。今、温暖地を散歩しても絶対に見られませんが、1年中で松ぼっくりを見る機会がいちばん多いであろうこの時期に、ぜひ紹介したくなりました。こんなに神秘的な松ぼっくりがあることを覚えておいてください。
私が初めて青い松ぼっくりを見たのは、7月にスコットランドのエジンバラ王立植物園(Royal Botanic Garden Edinburgh)を訪ねたときのことです。青い松ぼっくりなど今まで見たことがなかったので、その神秘的な美しさに本当に驚きました。調べてみると学名はAbies mariesii、日本の固有種であるオオシラビソでした。ラッキーなことにちょうど松ぼっくりが色づくタイミングだったこともあとで知りました。
東北地方では個人邸でもオオシラビソを栽培しているようですが、確実に見られるのは長野県北安曇野郡にある中部山岳国立公園 栂池(つがいけ)自然園です。標高1900〜2000mにあり、ロープウェイから木の上部につく青い松ぼっくりを眺められるのだそうです。ちなみにオオシラビソは別名をツガともいい、これが栂池の名前の由来になっているそうです。
栽培の難易度
冷涼な気候を好むので、残念ながら温暖地の夏の気候には耐えられません。寒冷地で栽培する場合は、日当たりがよすぎる場所は好まないので、明るい日陰などで、肥沃な土壌に植えます。最終樹高は45mくらいになるので、広いスペースを確保する必要があります。ただし、成長はゆっくりです。追肥の必要もなく、水やりも雨まかせでかまいません。自然樹形が美しいのが特徴なので、基本的には剪定はしないで管理しますが、枯れた枝は随時切り落とします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。