365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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濃いピンクの小さな蕾がこんなにたくさんつき、冬の間中楽しめます。これはスキミアの代名詞的存在の‘ルベラ’という品種で雄株。春にはごく淡いピンク〜白の小さな花が咲きます。雌株が実をつけるためにの受粉樹にも最適。■属科・タイプ:ミカン科の常緑低木
■花期:3月 蕾の時期:10月〜翌年2月
冬の間の蕾がとてもかわいらしい!
ミカン科の木と知ると、そういえば光沢のある葉はミカンの木によく似ていると納得できますが、冬の間の寄せ植え材料として小さな苗がよく出回るので、木という印象がない方も多いかもしれません。耐寒性も耐暑性も強い性質で、病害虫の心配も少なく、とても育てやすい低木です。
スキミアがいちばん魅力的なのは、花の時期よりもむしろ蕾の時期ではないかと思います。10月くらいから小さな丸い蕾がつき始めますが、品種によって濃いピンクやピンク、グリーンなどがあり、たくさんの蕾がボール状にかたまってつくので、花色のようによく目立ちます。
花が咲くのは3月なので、蕾を楽しめる時期が長いというのも珍しいと思います。しかも、花が咲くとどの品種も白〜クリーム色、または少しピンクがのるパステラカラーなので、蕾のときのほうが色の違いが明確でカラフルな印象を受けます。
スキミアはじつは日本原産のミヤマシキミがヨーロッパに伝わって改良されたもの。そのためシキミアと呼ばれることもあります。雌雄異株というミヤマシキミの性質はスキミアにも受け継がれ、冬に蕾を楽しんだあと春に花が咲くのは雄株です。雌株は秋〜冬に赤い実が楽しめます。ただし、雄雌の両方が揃っていないと雌株に実がつきません。
海外から輸入される切り花がフラワーアレンジメントの花材としてかなり以前から普及していたので、庭花としての印象が少ない方もいると思いますが、寒い冬の間、かわいらしい蕾で彩りを添えてくれる貴重な存在だと感じています。散歩道でもよく見かけるので、アップで眺めてかわいらしい蕾を観察してみてください。
落葉樹の下で、夏には明るい日陰になる場所に植えられたスキミア‘ルベラ’。株が大きくなって蕾の房もたくさんつき、ボリューム感ある姿に。スキミアは成長がゆっくりで、樹高は高くなっても100cmくらい。狭いスペースにも植えられます。栽培の難易度
夏の強い直射日光は苦手なので、明るい日陰で、水はけがよい場所に植えます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年からは年に1回、春か秋に緩効性肥料を施します。肥料が多すぎると葉ばかりが増えてしまいます。水やりは雨まかせでかまいませんが、土壌の乾燥が激しいときには株元にたっぷり水やりします。それほど大きくならないので、剪定せずに自然樹形で楽しめます。枯れた枝や伸びすぎた枝は随時取り除きます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。