365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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真っ赤な実と小判を連想させる葉が縁起よしとされるセンリョウは、お正月のアレンジや注連飾りによく利用されます。■属科・タイプ:センリョウ科の常緑低木
■実の鑑賞期:11月中旬〜翌年1月
お正月飾りの定番、千両(センリョウ)。じつは一両〜億両まであります
晦日、大晦日とお正月の飾りに切り花のセンリョウを用意された方も多いと思います。葉形が小判に似ていることから千両と名づけられ、赤い実がたくさんつくため昔から縁起がよい木として親しまれています。耐陰性があるため、北側の庭でもよく利用されてきました。
さて、センリョウを紹介する際に、触れないわけにはいかないのがマンリョウです。マンリョウも冬に赤い実をたくさんつけることから縁起がいいとされますが、じつはマンリョウはサクラソウ科の常緑低木で、センリョウとはまったく別の木です。
実のつき方を見れば一目瞭然。センリョウは葉の上に赤い実が集まってつきますが、マンリョウは葉の下に垂れ下がるように実をつけます。どちらも縁にギザギザのある葉ですが、センリョウのほうがふっくらしています。先に名づけられたのはセンリョウで、センリョウより大きく美しい実がなることからマンリョウとなったとされています。かつてはアカキと呼ばれていましたが、江戸時代中期くらいからマンリョウの名前が広がったと言われています。
小判(お金)に例えられた名前をもつ植物はセンリョウ、マンリョウだけではありません。ミカン科のツルシキミ=億両、サクラソウ科のカラタチバナ=ヒャクリョウ(百両)、同じくサクラソウ科のヤブコウジ=ジュウリョウ(十両)、そしてアカネ科のアリドオシ=イチリョウ(一両)、と一両〜億両まであります。
いずれも赤い実をつけることから縁起よしとされる常緑低木ですが、金額の大小は実のサイズや数、葉のサイズなどを比較して名づけられたと推測されます。その基準となったのが、真っ先に名づけられたセンリョウです。
こちらはマンリョウ。葉の下に垂れ下がるように実がつきます。実はセンリョウより二回りくらい大きく、千を超えて万と名づけられたことにも納得です。(写真提供/PIXTA)栽培の難易度
暖地性のため、関東以西の温暖地であれば比較的容易に栽培できます。明るい日陰で、やや湿り気のある土壌を好みます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。根づくまではしっかり水やりし、あとは雨まかせでかまいません。夏と冬に極端に乾燥させると実つきに影響するので、土壌が乾いているときには水やりしてください。地下茎から伸びた新しい枝を出して株が広がります。3年経過した古い枝には花が咲きにくくなり、実つきも悪くなるため、毎年3月に古い枝を地際からカットします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。