現代アート、才気発掘 第2回(全6回) 鑑賞することと、所有することとでは、アートの見える景色が違ってきます。“アートを自分ごと”にするための近道は、まず本物の芸術作品を所有してみること。アートをもっと身近なものにするために、新進気鋭のアーティストに注目し、発掘、そしてサポートしていく楽しさを紹介していきます。
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コレクター 白木 聡さん・鎌田道世さん(元広告代理店勤務)白木 聡さん、鎌田道世さんご夫妻は、30年以上にわたって数百点もの作品を集めてきた国内屈指のアートコレクター。
ご自宅には草間彌生さん、奈良美智さんをはじめとした巨匠たちの初期の作品から、20代の若手作家の最新作まで揃います。
作家に対しては、年齢などに関わらずリスペクトしているという白木さんは「作家には私たちには見えない世界が見えていて、それを“作品”として見せてくれているという気がします。既成概念に縛られず、多様なものの見方を教えてくれるアートに、これまで何度も救われることがありました」と語ります。
左から、大谷工作室《虫ちゃん》、戸谷成雄《イスの上の森》、リッキー・スワロー《Saturn Cup》、マキ・ナ・カムラ《See XLⅥ》、ビヨルン・ダーレム《惑星の木(ラズベリー)》。書棚にはアート関連の資料がずらりと並ぶ。上から、草間彌生の《かぼちゃ》、左下《インフィニティ・ネッツ(黒)》、右下《インフィニティ・ネッツ(青)》。“作品は誰かが買わないと残らない。残らないと歴史にならない”作品を購入する際は、ギャラリストや作家から直接話を聞くことも多いといいます。「作品を持てた時の感動、2年、3年、そして10年と時が経つ中で、また新たな活動や発見の場に立ち会え、気がつけばアートは様々な体験をもたらしてくれます」と鎌田さん。
杉戸 洋の《Voyage》。「あまり特定の作家に偏らないコレクションですが、杉戸さんの作品は多い方で、10点以上はあります」。玄関を開けて最初に出迎えてくれる3作品。左から、高畠依子の《Untitled》、樫木知子の《目柄のワンピース》、内藤京平の《look》。購入決定までに何度もギャラリーを訪ねることもあるとか。「金額の高低に関係なく、購入する時は毎回一球入魂の気持ち。後で『なぜ買ってしまったのか』と思うことはあまりないですね」と話します。
作品に真摯に向き合うことが、アートを愉しむ秘訣のようです。
冒頭の写真の作品紹介
〈作品1〉教科書を持つ手 2018 8×9×20cm(左手)、8.5×9×20cm(右手)
〈作品2〉Late Night 2019 10.2×10.2×12.7cmハン・イシュ〈作品1〉
Ishu Han(1987-)中国出身で、子どもの頃に日本に移住。「いろいろと考えさせられるコンセプチュアルな作品が多いです」。
マーカス・レスリー・シングルトン〈作品2〉
Marcus Leslie Singleton(1990-)2022年9月にアジアで初めて開催された国際的なアートフェア「FRIEZESEOUL」で購入した作品。カラフルな色彩で存在感が際立つ。
リバー/River 2021 60×91cm杉原玲那Reina Sugihara(1988-)「あるパーティーでお会いしてアートの話をしたのが最初。数年後に実際に作品を見る機会があり手に入れた作品です」。
振返る 2015 72.7×60.6cm西村 有Yu Nishimura(1982-)何気ない日常の中で女性が振り返る、その瞬間を絵にした作品。世界各地の展覧会で紹介される機会も増えている。
犬のように歩き回った偉大な男 2009 145×100cm千葉正也Masaya Chiba(1980-)自作のオブジェや写真を絵画に取り込んだ20代の頃の作品。「20代前半から注目していました。今では大変人気の作家です」。
buttai 49 2018 25×45×37cm土肥美穂Miho Dohi(1974-)多様な素材や色彩からなる立体作品は、不思議な質感や重量感を感じさせる魅力がある。海外での作品発表も多い。
撮影/齋藤幹朗
『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。