2作とも監督と脚本を手がけているのはスペインのペドロ・アルモドバル。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『オール・アバウト・マイ・マザー』ほか数多くの受賞作品がある。
『パラレル・マザーズ』
© Remotamente Films AIE & El Deseo DASLU 配給:キノフィルムズ最新作の『パラレル・マザーズ』は彼のライフワークでもある“母の物語”に立ち返り、同じ日に母親になった二人の女性の不思議なめぐり合わせや母親として生きる姿を描いた。
また、監督にとって大切な「スペイン内戦」についてもストーリーのなかで絶妙に取り入れ、広くて深い世界観を創り上げている。
主演はアルモドバル監督の盟友であり、ソウルメイトといわれるほど親しいペネロペ・クルス。マドリードでフォトグラファーとして活躍しているジャニスを演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。
『ヒューマン・ボイス』
© El Deseo D.A. 配給:キノフィルムズ一方で全く異なる印象の『ヒューマン・ボイス』はジャン・コクトー作の戯曲「人間の声」を原作に脚色された作品である。
登場するのは元恋人がスーツケースを取りに来るのを待つ一人の女と犬。絶望したり、理性を失ったりする女のさまざまな感情が淡々と映し出される。
作中でその女が住んでいた家が映画撮影用のサウンドステージであることを明らかにするのが斬新。彼の表現の幅の広さを感じさせられる。
『パラレル・マザーズ』
2021年 スペイン・フランス 123分
監督・脚本/ペドロ・アルモドバル
出演/ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノほか
URL/
https://pm-movie.jp/ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほか公開中 構成・文/山下シオン
『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。