驚きと感動の“美味逸品” 第14回(全29回) 料理は、言葉より雄弁にその国のことを物語ります。駐日大使公邸のおもてなしを拝見し、世界各国の料理をレストランで楽しみ、珍しいスパイスやハーブに出合える食材店を巡る――私たちの周りにたくさんある“日本の中の外国”へご案内します。
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エンリケマルエコス(東京・東北沢)
円錐形の蓋のついた伝統の鍋を使って、牛肉のミートボールをトマトソースで蒸し煮にした「ミートボールのタジン」。クミンやパプリカの風味が繊細なアクセントを添える。毎日食べたくなるモロッコの家庭の味
異国情緒漂うランプの明かりに照らされたドアを開くと広がるのは、オープンキッチンを囲むカウンター10席のみのアットホームな空間。手際よく料理が仕上げられていく様子を眺めながら、スパイスやハーブを穏やかに利かせて食材の味を生かす軽やかなモロッコ料理をコースで楽しめるお店です。
オーナーシェフの小川歩美さんは、世界中を旅する中で出会ったモロッコの家庭料理に惹かれ、現地で5年間の研鑽を積んだ経歴の持ち主。
素敵な笑顔で迎えてくれるオーナーシェフの小川歩美さん。お店には、故郷の味を求めて訪れる日本在住のモロッコ人のお客さまも多い。レストランの厨房で働きながら数多の家庭の台所を訪ねてベースを学んだ後、テレビなどで活躍する著名な料理家の調理アシスタントになる道を熱意で自ら切り開きました。
そうして伝統的な郷土料理からフレンチの手法を取り入れたモダンなものまで、幅広くモロッコ料理を修得したのです。
「外食をする習慣がないモロッコでは食事は家でするもの。そして時短という概念もありません。お母さんたちは一日の大半を台所で過ごし、手間をかけて家族のためにおいしい料理を作ります。目指しているのは、そんな愛情を込めて作られるモロッコの“ママの味”」と微笑む小川さん。
朝から仕込みを始めて丁寧に作る一皿一皿はどれも優しさに満ちた味わいで、食べる人の心を和ませます。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
エンリケマルエコス
東京都世田谷区北沢3-1-15
TEL | 03(3467)1106 |
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営業時間 | 18時〜22時(土曜・日曜・祝日は17時〜21時30分) |
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定休日 | 月曜・火曜定休(年末年始・ゴールデンウィーク・夏季に長期休業あり) |
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撮影/本誌・坂本正行 取材・文/鈴木博美
『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。