外濠公園の土手を軽快にジョグ。「精神的にダメージを受けたら、走るか歩く。すると、いつもの自分に戻れるんです」と茂木先生。雑談、むちゃぶりが脳を活性化する
茂木 誰でも簡単にできて、脳の活性化にいいのが、雑談です。ある意味、脳のいちばん高度な能力が必要とされるものなんですね。最新の人工知能も、人間のような雑談はできません。
松岡 人間ならではの優れた能力なのですね。
茂木 僕はよく、「雑談を本当に楽しめているかどうかで、心の健康がわかる」と話すのですが、そういうときに、「私は雑談なんかしている暇はないんです!」とか、「人と話すのはストレス」という人は、心の健康を見直したほうがいいかなと思います。
松岡 今おっしゃった心は、脳と一緒ととらえてよいでしょうか。
茂木 そうですね。僕はイコールだと思っています。
「僕はよく『ぼー』といいながら、ぼーっと空を見ています」── 松岡さん
松岡 先生は一方で、ぼーっとする時間も脳には必要だとおっしゃっていますね。
茂木 ええ。脳がぼーっとしている状態のときにのみ行う「デフォルトモードネットワーク」という神経活動があるのですが、これは脳のメンテナンスをしてくれるスパみたいなもので、非常に大事です。でも、残念ながら、今の日本では、ぼーっとしている人をなかなか見かけませんよね。電車のなかでも、ほとんどの人がスマホに見入っている。養老(孟司)先生みたいに、ぼーっとしている姿が美しい人はいいなとつくづく思います。
松岡 養老先生は美しいです。僕はよく「ぼー」と声に出していいながら、空を見ています。「ぼー」に集中するからマインドフルネスになるというのが僕のとらえ方です。
茂木 音から入るのはいいですね。もちろん、脳にはメリハリが重要で、ぼーっとする時間とともに、脳を鍛える時間も大事です。強度の高い課題に取り組むと、神経細胞のつなぎ目が強くなってぼけにくくなることがわかっているので、1日1回くらい何か脳を鍛えることができるといいですね。語学の勉強やパズル、スポーツで頭を使うのもおすすめです。バイリンガルの人は認知症になりにくいというデータもあるんですよ。