好奇心を持ち続けて何歳でもチャレンジを
松岡 ただ、年を重ねていくと、そうしたチャレンジが億劫になると聞きます。それは、やはり脳が年取ったためでしょうか?
茂木 それは間違いないと思います。ですから、意識して、好奇心を持ち続けるようにしたいですね。チャレンジの最大の原動力は、好奇心ですから。僕は今日、「修造さんとどんな話になるだろう」とワクワクしながら来ましたが、これは脳にいい。「修造かぁ、面倒くさいなぁ」ではなくね(笑)。
松岡 あはは(笑)。僕も先生とお会いできるのが楽しみでした。
茂木 朝起きたとき、今日が楽しみというのが脳の健康にはいちばんいいと思うんですけどね。修造さんはいかがですか?
松岡 僕はネガティブに考えるほうなので、テクニックで前向きに持っていっている面があります。朝起きた途端、窓をバッと開けて、「おはよう!」という。そうすると、気持ちがポジティブに切り替わります。
茂木 よくわかります。口角を上げただけで楽観的になるという研究報告もある。前向きになれば、新しいチャレンジもできるようになります。
松岡 そうすると脳は喜ぶわけですね。新しいのきたぞ!って。
茂木 そう! 脳にとって、いちばんのご馳走は新しい経験ですから。それで、僕はいつも、むちゃぶりするんです。高校でよくやるエクササイズの1つが「英語で何か話す」。みんな戸惑いますが、やり終えた後は顔が変わっています。「あ、俺、意外にしゃべれるかも」「次はもうちょっとうまくやろう」などといいながら、生き生きしている。経験したことのないモードで脳を使うと、楽しいんですよね。
松岡 楽しく脳を鍛えられますね。
茂木 3月までと決めて油絵を1つ描くとか、小説を1作書き上げて新人賞に応募するとか、そういうのもいいですよね。修造さん、せっかく健康に関する連載をやっているのだから、書いてみたらどうですか? 自らの脳の健康を高める「松岡修造小説プロジェクト」。みんな読みたいですよ、修造さんのテニス小説。
松岡 僕は先生のそういう考え方が好きだから、いつも「崖っぷち大好き」とか「有言実行」といっているんです。小説はともかく、自分自身へのむちゃぶり、心がけます。
修造の健康エール
茂木先生のお話はいつも魅力的で勉強になるので、『修造学園〜学校では教えてくれない授業〜』というテレビ番組で2度講師をしていただきました。その際、いちばん心に残ったのが、難しい課題に向き合っているとき、脳は喜んでいるんだぞ!という話です。どんなに苦しいチャレンジでも、脳は「大丈夫、問題ない」と思ってくれている。「ノー(脳)プロブレム」って、そういうことなんですね。今日のむちゃぶりの話に通じます。
そして、これが若い人だけでなく、何歳の人にも当てはまると考えると、もっとがんばれる、という気持ちになります。茂木先生ご自身は、英語のご著書の出版など、ご自分で決めた目標を一つ一つ実行されているとのこと。僕も先生を見習って、「脳プロブレム」の精神でチャレンジを続けます!
松岡 修造(まつおか・しゅうぞう)
1967年東京都生まれ。1986年にプロテニス選手に。1995年のウィンブルドンでベスト8入りを果たすなど世界で活躍。現在は日本テニス協会理事兼強化本部副本部長としてジュニア選手の育成・強化とテニス界の発展に尽力する一方、テレビ朝日『報道ステーション』、フジテレビ『くいしん坊!万才』などに出演中。大人気の『修造日めくり』はシリーズ累計210万部を突破。近著に『教えて、修造先生! 心が軽くなる87のことば』。ライフワークは応援。
撮影/鍋島徳恭 スタイリング/中原正登〈FOURTEEN〉(松岡さん) ヘア&メイク/大和田一美〈APREA〉(松岡さん) 取材・文/清水千佳子
『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。