というわけで、忙しいノンちゃんを拝み倒して一緒に、銀座にある「RDクリニック」に行ってもらった。予約はノンちゃんに頼んだ。
しっかり者のノンちゃんは事前にパンフレットなどの資料を送ってくれた。さすがは医療関係の書籍の編集者である。
でも、そのパンフレットはけっこう難しい内容だった。簡単に述べると、これは皮膚の再生医療だ。当然、皮膚というものは年齢と共にシワ、クマ、タルミなどが出て来る。それは、肌細胞を作り出すコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸が急激に減少し出すからだそうだ。
ここまでは私でもすんなり理解できる。年齢相応に肌が衰える実感は誰もが経験しているだろう。そのため私だって87歳に見えたりするのだ。
では、そのいささかくたびれた肌をどうするのか。もちろん、基礎化粧品の多くは肌に艶や張りが蘇ると謳っている。だけど、いくら高価な化粧品を塗りたくっても、周囲の人が驚くほどの“劇的”な若返りを経験したことはない。
RDクリニックで実施しているのは、まず、顔の肌に比べて紫外線によるダメージが少ない耳の裏側から米粒ほどの皮膚を採取する。
ちょっと話を先取りするが、実はこの皮膚の採取というのが、私には引っかかった。いや、怖い気がした。痛いかなと身構えていたのだが、実際には麻酔薬を塗布してくれたので、ほとんど痛くなかった。
その皮膚を細胞培養加工施設で1万倍に増殖させるのだそうだ。よって初日は米粒ほどの皮膚を採って診療は終わる。そうそう、血液も140㏄ほど採取された。次は5週間後に来て下さいと言われる。それまでに、わが皮膚の細胞が1万倍に増えるのだ。でも、無駄に増やすのではなくて、数年間は保管してくれる。凍結保存される。「セルバンク」という会社が預かってくれて、もっと肌が衰えた時に顔に戻すらしいけれど、この時は私はまだそこまで思いを巡らせることが出来なかった。
だいたい、どうやって細胞を皮膚に戻すのだろうと考えていたら、このクリニックで施術をして下さる北條元治先生が詳しく説明してくれた。
見るからにスポーツマンらしくて、すらりと長身の先生は、頭の回転がいかにも速そうだ。つまりIQが高い人。そうじゃなかったら、こんな画期的な施術を実践しないだろう。
お医者さんは見た目じゃないというけれど、患者にしてみると初めの手掛かりは外観しかない。なんとなく安心な感じのお医者さんは嬉しい。
後から考えると私は北條先生には主に3つの質問しかしなかった。
「どうやって皮膚を顔に戻すのですか?」
「施術は痛くないですか?」
「私は80歳以上に見えるほど老け顔ですが大丈夫ですか?」
これに対する先生の回答は明快だ。
まず、顔の中でも法令線とか目の下とか特に気になる部分などに少しずつ注射をする。回数は人によって違うけれど200回から300回くらいらしい。細い注射針でちょこちょこと入れて行く。
痛さは個人差がある。まったく平気な人もいるし、痛いと言う人もいる。でも、切ったりするわけではないから、想像を絶するような痛みではない。
そして患者さんの中には80歳以上の方がいる。若ければ若いほど細胞は新しいから、それに越したことはないけれど、減少してしまった細胞を補充する治療なので、その効果はじゅうぶんに見込める。