365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> 早咲きのウメ
早生のナノハノの黄色を背景に咲く花ウメの‘道知辺(みちしるべ)’。野梅系の品種には早咲き種が多く、これも1月中旬から咲き出します。あでやかなピンクの花色がかわいらしい!■属科・タイプ:バラ科の落葉高木
■花期:1月〜3月
あでやかな花にのせて新春の慶びをお届けします
あけましておめでとうございます。今年も日々の花散歩で出会うたくさんの植物を毎日ご紹介していきます。
2023年の始まりにふさわしい花をと考え、古くから縁起がよいと親しまれてきたウメを選びました。
百花魁(ひゃくかかい)。これは、他の花に先駆けて早春から咲くことからつけられたウメの別称です。花を愛でるために改良された花ウメ、実を収穫するために改良された実ウメ、両方を含めると現在250種ほどがあるといわれますが、なかにはすでに咲き出している早咲きの種類も多くあります。
毎年、元旦に近所のお寺に初詣でに行くのですが、その途中にある‘寒紅梅’が10輪くらい咲き出しているのを見かけます。そのウメが私の花散歩で出会う年初の花になります。日本の春を代表するバラ科の花木には、ウメの他にモモとサクラがあります。個人的にはウメがいちばんのお気に入りで、それが一年の最初に出会う花であるのはとてもラッキーなことだと感じています。
ウメは中国原産で、紀元前12世紀頃から生活に利用されていたそうです。日本に伝わった正確な時期はわからないものの、奈良時代にはすでに栽培されていたと推測されています。
今でこそ春のお花見といえばサクラですが、お花見=サクラとなったのは江戸時代以降のことで、それ以前のお花見はウメだったのではないかともいわれています。もともと日本に自生していたという説もあります。ウメの栽培が庶民レベルまで広がり、品種改良が盛んに行われた江戸時代には、現在よりも多い300種くらいの品種があったそうです。
私がウメをこよなく愛するのは、モモやサクラに比べるとどこか妖艶な雰囲気があることが大きな理由です。丸みのある花弁がかわいらしいのですが、その花弁からはみ出すくらいに長く伸びる雄しべが48本もあり、それが私には長いまつげのように見えるのです。もしウメの花がゆっくり瞬きでもしたらどれほどの色香が漂うことか、想像するだけでうっとりしてしまうのです。
色香というイメージだけでなく、実際にほのかに甘い香りがするのもウメの大きな魅力です。「馥郁たる梅の香り」とよくいわれますが、その香りは朝、花が開くときがいちばん強いそうです。これから春先まで、さまざまな種類のウメに出会えるので、ぜひ香りにもご注目ください。
濃い桃色が鮮やかな‘紅鶴’。一重咲きで花弁が反る傾向があり、雄しべがより長く見えます。栽培の難易度
苗木の植え付け適期は11月〜翌年3月。日当たりがよく、肥沃で水はけのよい場所が適しています。根を広げられるように大きめの穴を掘り、前もって元肥を施しておきます。苗木を植えつけたら、倒伏防止のために支柱を立てておきます。植えつけてから2年くらいは土の表面が乾いたら水やりをします。施肥は年に1度、12月〜翌年1月に有機質肥料を株元に施します。6月〜7月に長く伸びた枝をカットし、混み合った枝を間引く剪定をします。樹形の乱れを直す剪定は、落葉後の冬季に行います。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。