365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ニホンズイセン
ニホンズイセンの葉は幅が細く直線的に伸びます。そのシャープな葉を背景に咲く姿をそのまま部屋に飾りたくなります。■属科・タイプ:ヒガンバナ科の秋植え球根
■花期:12月〜翌年2月
■草丈:30〜40cm
凜として咲く気品ある姿に惚れ惚れ
お正月にニホンズイセンのアレンジを飾っている方もいらっしゃると思います。すっとまっすぐ伸びる葉、先端に咲く清楚な花、そして花から漂うすがすがしい香り。数あるスイセンの中でも、凜とした気品ある姿はニホンズイセンならではの魅力だと思います。一年の始まりに部屋に飾るにふさわしいと感じ、私も毎年切り花を購入し、アレンジしています。
ニホンズイセンは多くのスイセンの中でもっとも咲き出しが早く、暖かで穏やかな気候のエリアでは12月中旬にはもう咲き出します。この時期、よくニュースでニホンズイセンの名所が紹介されますが、いずれも観賞時期は12月中旬から翌年1月下旬まで。東京の開花は2月中旬なので、各地の名所に足を延ばして、ニホンズイセンを愛でるのもおすすめです。
関東では千葉県の房総半島西南にある鋸南町の「江月水仙ロード」が有名で、愛媛県伊予市の「日本水仙開道」、熊本県天草市の「すいせん公園(遠見山公園)」などでもこの時期に見頃を迎えます。意外なところでは福井県の越前町にある「越前岬水仙ランド」も12月中旬から開花するそうで、寒風の中で咲くニホンズイセンの姿も一度見てみたいと思っています。
ところで、お正月用の切り花のニホンズイセンは、ハウス内で栽培されるものがメインですが、市場では花茎と葉の長さで選定されるそうです。花市場に勤める知人から教えてもらったのですが、これは昔から生け花で花茎と葉のバランスが細かく決められていることを受けてのランク分けで、花首からすべての葉が2〜3cm出ているものが上のランクで「長首」と呼ばれるそうです。
そこまで花茎と葉の長さのバランスにこだわるのも、ニホンズイセンの凜とした花姿をより美しく見せたい、という気持ちからではないかと思います。バランスが悪い場合は、花茎と葉を一度ばらばらにして、バランスよくまとめ直してから挿すことも可能です。温暖地でも咲き出しているのを見かけたら、自然な状態での花茎と葉のバランスにもご注目ください。
数輪が重なるように房咲きに。すがすがしい香りも魅力なので、ぜひ鼻を近づけてみてください。栽培の難易度
球根の植えつけ適期は9月下旬〜11月です。日当たりがよく、水はけのよい土壌に植えつけます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。地植えの場合は水やりは雨まかせでかまいませんが、乾燥がひどい場合にはたっぷりと水やりします。スイセンは一度植えつけると花後に掘り上げなくても植えっぱなしで数年咲いてくれます。10〜20球をひとかたまりにして植えると、ボリューム感のある姿が楽しめます。花後は花がらを摘み、葉は完全に枯れるまでそのままにしておきます。葉が光合成をすることで、地中の球根に養分が供給されます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。