365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> フクジュソウ
枯れ葉のたまる地面に鮮やかな黄色の花が咲くと、そこだけ日差しを集めたように明るくなります。ふっくらした丸い花を見ていると、思わず顔がほころびます。■属科・タイプ:キンポウゲ科の宿根草
■花期:2月〜4月
■草丈:20〜30cm
江戸の昔から新春を祝う花として人気
フクジュソウが咲き始めています。個人的にフクジュソウの開花には敏感なのです。なぜなら頻繁に通る道沿いにフクジュソウを植えているお宅があり、「あっ、蕾が出てきた!」「わあ、咲き始めてた〜」と毎年、その成長を目にしているからです。温暖地に限った開花情報ではありますが、「フクジュソウ咲いてるよ〜」と友人たちに知らせるととても喜ばれるので毎年続けています。
地面から近いところにまぶしいほどの黄色の花を咲かせると、その辺りがパッと明るくなり、遠目にもよく目立ちます。福寿草という縁起のよい名前から、お正月に鉢植えが出回りますが、地植えで咲くのはちょうど今頃からです。
フクジュソウがお正月の花として利用され始めたのは江戸時代初めの頃からで、江戸時代にはすでに多くの品種が生み出され、幕末近くには130を超える品種があったといわれています。江戸の古典園芸を代表する早春の花が現在でも愛されていることに、日本人の植物を慈しむ心を感じ、うれしい気持ちになります。
さて、フクジュソウを観察していると、晴れている日は開き、曇りの日や夜間には閉じていることに気づきます。ただし、暗い中でも気温が15〜20℃あれば花は開くそうです。
これは傾熱性によるもので、温度差に反応して開花、閉花の変化が生じています。なぜ、そんな変化をするかというと、開花したときに日光を集め、それを中央部に集熱することで保温力を高め、昆虫を集めて受粉を行うのです。これは蜜を持たないフクジュソウの種の保存のための戦略といえます。
花が開いているフクジュソウに出会ったら、ただ「きれいねぇ」と写真を撮って終わりではなく、今この花は種を残すためにがんばっているのだと想像してみてください。
私が毎年、友人たちに開花情報を伝えているフクジュソウです。おそらく10年以上、同じ場所で花を咲かせてくれています。ただ咲いているだけでなく、中心部の温度を高めて昆虫を呼び寄せているとは!栽培の難易度
春〜初夏は日当たりがよく、夏には日が遮られる落葉樹の下などが適しています。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年以降は12月くらいに緩効性肥料を株元に混ぜ込みます。地植えの場合、水やりは雨まかせでかまいませんが、乾燥が激しいときには株元にたっぷり水やりします。乾燥に弱いので、鉢植えの場合は表土が乾いたらたっぷり水やりします。また、夏には地上部がなくなって休眠に入りますが、水やりは欠かさないようにします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。