「困ったときこそ、感情より理性を働かせることが大切。そうすれば、道は見えてきます。」(美輪さん)
「『光明』とは、自分が明るく優しい思いやりの心を持っていることを想い出すためのキーワードです」と美輪さん。美輪 自分が選んだ道ですもんね。誰かの言葉なんですけれど、「我が道は険しい。けれども我が選びたる道なれば」という言葉があったんですけどね。結局考えてみたら、今ある人生は誰が選んだものでもない。自分が選んでこうなっているんだから、戦ってやろうっていうことですよ。そして、そういう苦しいときには、難しいけど理性と情念とを入れ替えて、感情を押し殺してどこかへ飛ばして冷たい理性だけを残して考えると切り抜けられることがあるものです。その時は、姿勢をよくすること。人間悩むと、首をうなだれて猫背になっちゃう。目線をまっすぐにするか、上を向いて胸を張って体をまっすぐにするんです。そうすると少しずつ、気持ちも冷静に戻ってくるんですよ。姿勢を変えるだけで、考え方も変わってきます。だからいろいろやってみることですよね。
五木 僕も、アヒルの水かきじゃないけど、それなりにいろいろ試しています。歩き方だけでももう20年以上やっているんだ、遊びでね。今は歩幅を何とか、70センチぐらいにしようと頑張っているけど、これがなかなか難しい(笑)。
美輪 呼吸法も、長くなさっているんでしょう。口呼吸がいちばんよくないんですよね。
五木 僕は、父親がずっと呼吸法をやっていたもんですから、うしろについて小学生の頃からずっと呼吸をやってきました。呼吸法からいえば、お坊さんがお経を読むのは息を長く吐く行為なので体にいいらしい。こういうことも続けることだと思います。
美輪 本当にそうですね。気持ちを強く持って、自分が選んだ道をポジティブに進んでいく、そういうことで随分変わることもあるのではないでしょうか。そして、感謝の心は、どんなときにも忘れてはいけません。
「最後は、なんとかなるもの。考えすぎず、過ごしていれば案外悪くない結果になります。」(五木さん)
数十年ぶりの再会と、初めてとなる二人きりの対談という貴重な機会を表した「一期一会」。五木さんは対談の際に、いつもこの精神で臨む。五木 僕は物事をあまり深く考えないんですよ。考えると生きているのが嫌になるという時期が長かったですからね。いちばん端的なことを言ったら、生きていればなんとかなるって思っています。もちろんなんともならないというときはあるんですよ。それでもなんとかなるんです(笑)。最後には。八方塞がりという言葉があるじゃないですか。そんな場合でも、僕はまだ二方残っているじゃないか、と思うようにしています。
美輪 地獄か極楽かは胸三寸っていうことですよね。自分の心をね、清らかなところに住むようにすると極楽に。暗く忌まわしいところにいれば暗いところを抜け出せない。とにかく1日も早く自分を救いたければ、暗く忌まわしい心を捨てて、明るく優しく思いやりのある心になればいいんです。なんでも自分次第。極楽浄土は自分が作るんです。そして、ケセラセラ。本当に、最後はなんとかなるものですよね。
五木 お互い体も心も健康を保って、またお会いしましょうね。僕は、美輪さんのことを同時代を生き抜いた戦友だと思っているんですから。
美輪 本当に嬉しいです。ぜひ、またお目にかかる日まで楽しみにしています。
撮影/御堂義乗 取材・文/小倉理加
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。