日本の絶景神社巡り 第3回(全19回) 心の平安と開運を祈願して、『古事記』ゆかりの神様に会いに行く、わが家に神様をお迎えする、という2つのアプローチで日本の神様と真摯に向き合います。
前回の記事はこちら>> 日本最初の夫婦神を祀る最古の神社
伊弉諾(いざなぎ)神宮 [兵庫県淡路市]【夫婦円満】
樹齢約900年の「夫婦(めをと)の大楠(おほくす)」。地上2.25メートルから下の幹が一体化した奇樹で、伊弉諾大神、伊弉冉大神が宿り給う御神木として崇められている。訪れる人 大地真央さん(女優)
前回の記事「大地真央さん、国生みの島に降臨」はこちら>>淡道之穂之狭別島(あわじのほのさわけのしま)、古事記ゆかりの地を巡る
日本最古の書物『古事記』に記載された最古の神社といわれる伊弉諾神宮。御祭神は伊弉諾大神(いざなぎのおほかみ)と伊弉冉大神(いざなみのおほかみ)です。
境内は日本の標準時を算出する際の基準となる子午線に指定されている東経135度近くに位置。
下の図のように、伊弉諾神宮を中心として夏至、冬至、春秋仲日の日の出と日没の地に神々が鎮座していることがわかります。
伊弉諾神宮を中心とする太陽の運行図伊弉諾神宮を中心に、それぞれの方位にはゆかりのある神社が鎮座している。地図製作/地図屋もりそん1.淡路島南部、伊弉諾大神・伊弉冉大神を祀る「諭鶴羽(ゆづるは)神社」、おのころ島の伝承地「沼島(ぬしま)」
2.日本最初の都「飛鳥藤原京」
3.皇室の祖先神「伊勢の皇大神宮(内宮)」
4.那智山全体が自然信仰の原点「熊野那智大社(那智大瀧)」
5.建御名方神が国譲りの後に鎮まった地「諏訪大社」
6.天日槍(あめのひぼこ)が祀られる但馬国一宮「出石神社」
7.日本神話の三大聖地「出雲大社」
8.神武天皇の祖母・豊玉姫(とよたまひめ)を祀る対馬国一宮「海神神社」
9.天孫降臨の地「高千穂神社」「天岩戸神社」御本殿の横には、樹齢約900年の“夫婦(めをと)の大楠(おほくす)”も。本名孝至(ほんみょうたかし)宮司がご案内くださいました。
「この楠は1本の樹が2本に分かれたのではなく、もともと2本だったものが結合したものです。生長過程でどちらかが淘汰されることが多いそうですが、どういうわけか2本とも同じような樹勢を保って生長を続けています」と本名宮司。
「奇跡のようですね。御利益がありそうです」と大地さん。32年、伊弉諾神宮に仕えてこられた本名宮司と大地さんの間では共通の話題も多く、地元の話に花が咲きます。
「淡路島は、海があって山があって、魚も肉も野菜も水もおいしい。帰ってくるたびにホッとします。いい“気”が流れているように感じますね。島の人々は、日本のすべてがここから始まっているというプライドを持っています。淡路島は、やはり特別な島だと改めて実感しました」
拝殿。後背に本殿があり、神功を果たした伊弉諾大神が余生を過ごされた「幽宮(かくりのみや)」の跡地と伝えられ、そこに神陵(みささぎ)が構えられたことが神社創祀の起源とされる。伊弉諾神宮【主な御祭神】伊弉諾大神(いざなぎのおほかみ)、伊弉冉大神(いざなみのおほかみ)
【御神徳】夫婦円満
淡路国一ノ宮。男神の伊弉諾大神、女神の伊弉冉大神をお祀りしていることから、国家安泰をはじめ、縁結び、恋愛成就、子授け、安産祈願、家内安全、子孫繁栄、厄除け、無病息災、病気平癒、延命長寿、商売繁盛、出世開運など、信仰は多岐にわたる。金婚・銀婚記念式の祈願も受け付けている。
●兵庫県淡路市多賀740
TEL:0799(80)5001
伊弉諾大神が黄泉の国から戻られる際、桃の実を投げつけて難から逃れた故事から、桃を象った祈願絵馬やお守りが授与されている。淡路島“おのころ伝説”が宿る地を訪ねて
天の御柱 上立神岩沼島の東側にある、島を象徴する岩。伊邪那岐命と伊邪那美命がおのころ島に降り立ち、その周囲をまわって婚姻を行い、国を生み出したという巨大な柱「天の御柱」に見立てられている。高さ30メートルの奇岩が朝日に浮かび上がる。伊邪那岐命と伊邪那美命が天浮橋(あまのうきはし)から天沼矛(あまのぬほこ)で海をかき回し、矛から滴った潮が自ら固まり、まずは日本の最初の国土となる「おのころ島」が誕生。次に、二神がこの島に降り立って夫婦の契りを結び、最初に生み出したのが淡路島。
これが『古事記』に記された「国生み」の物語です。
「おのころ島」が現在のどこにあたるのかは諸説あり、淡路島の南端に浮かぶ「沼島」、
前回の記事で大地さんが降り立った「絵島」が有名。淡路島島内にも“おのころ島伝説”を宿した神社や旧跡が点在します。
「子どもの頃から、おのころ島とは沼島のことだと教えられて育ちましたが、初めて絵島に来て、ここもそうかもしれない、と感じました。もしかしたら、天沼矛から、ぽたり、ぽたりと同時にいくつかの雫が落ちたのかもしれませんね」と大地さん。
「沼島は鱧の漁場で、数年前に家族で“鱧尽くし”のお料理を食べに行き、そこで、戦後、教師をしていた父の教え子だったというかたに偶然お会いして、若かりし頃の父の写真を見せていただいたこともいい思い出。不思議なご縁を感じます」。
撮影/小林廉宜 取材・文/安藤菜穂子 スタイリング/江島モモ ヘア&メイク/石月裕子 ●特集内の表記、ふりがなは各神社、著者の指定に準じます。
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。