藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
記事一覧はこちら>> 12月の花「スイートピー」(前編)
※後編は明日2022年12月16日配信予定です。
息子さんからお母さまへ、クリスマスプレゼントの贈り花のオーダーをいただきました。赤は2種類のバラとカーネーション、白はラナンキュラス。大きな花の間に鮮やかな赤のスイートピー‘アカープ’を加えて束ねました。クリスマスリースにもよく利用するサツマスギを入れてさらにクリスマス気分をアップ!‘アカープ’は宮崎県日南市の「太陽農園」さんの生産です。スイートピーは出荷量もクオリティも真冬がピークです
ひらひらとした蝶のような軽やかな花形。その花形にさほど変化はないのに、どうしてこんなにバリエーションが豊富で、使い勝手がいいのでしょう。11月中旬に出荷が始まり、4月まで、私の店にスイートピーがないことはまずありません。この期間、贈り花を制作しながら、スイートピーの存在のありがたさを痛感しています。
スイートピーの場合、バリエーションとは基本的に花色の違いになりますが、毎年のように新色が登場するため、そうでなくても豊富にあるのが、ますます豊富になるというとても贅沢な状況です。たとえばピンクでも濃淡さまざまがあり、さらにグラデーションにそれぞれの個性が表れるので、“この贈り花に合わせたいのはこのピンク”とぴったりの花色が見つかります。逆に魅力的なスイートピーをまず選び、それに合わせて他の花を選ぶパターンもあります。
スイートピーの使い勝手のよさは、あの特徴的なひらひらした花形にもあります。バラやリシアンサスなど大ぶりな花を隣り合わせに挿した場合、「ひらひら」がすき間をきれい埋めてくれるのです。とくにバラに多い赤や白の場合、スイートピーの赤と白は大活躍。スイートピーの赤はバラに劣らぬ鮮やかさ、そして白もくすみがなく美しい花色です。しかも、すき間を埋めても重たい印象にはならないのは、軽やかな花形のおかげだと思います。
もう一つ、スイートピーを利用したクリスマスの贈り花を。和歌シリーズのバラ‘唐紅’に、染めのスイートピー‘ゴシックブラウン’、八重咲きアネモネ‘フルスターレッド’、アスチルベ‘ライトピンク’などを合わせたアレンジです。少しだけ茶色みが混じる‘ゴシックブラウン’が醸し出すアンティーク感が、クリスマスにぴったりな雰囲気です。スイートピーは全国で生産されていますが、なかでも生産量が多いのが宮崎県、岡山県、神奈川県で、宮崎には「式部三姉妹」、岡山には‘夢二’や‘ベール’、神奈川には見事な絞り模様の‘スプラッシュブルー’など、魅力的なオリジナル品種があります。
今年はどんなスイートピーが登場するのだろう、とオリジナル品種のデビューをわくわくしながら心待ちしています。
この下の「スイートピーを使ったブーケ&アレンジメント」ではたっぷりと魅力的なスイートピーをご紹介しますが、これでも豊富なバリエーションのごく一部なんです。ぜひお近くの花屋さんでスイートピーを生でご覧になってください。
きっと大切な方へ、そのかわいらしさを届けたくなりますよ。
手前の白は宮崎県「JA尾鈴」の‘ロイヤルホワイト’、右隣は宮崎県日南市の「増田農園」さんの‘紅式部’、真っ赤が岡山県倉敷市船尾の「ファームたかお」さんの‘キャンディポップ’、隣の淡いピンクが宮崎県「JAはまゆう」の‘ピュアソラ’、後方の淡いピンクは岡山県「JA晴れの国岡山」の‘ベール’。こんなに素敵なスイートピーがお店に揃い踏みすると、テンションが上がります。 藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書
『大切な人への贈り花』も好評。
https://www.fleurs-tremolo.com 藤野幸信さんのブーケやアレンジメントで1年を綴る『家庭画報 花カレンダー2023』ができました!
藤野さんの上品でエレガントな花束が、空間を飾る素敵なアクセントに。コラムでは花にまつわるさまざまな記念日を紹介しています。 ・
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