ラグジュアリーホテル話題のダイニングで華やぎの新年を 第4回(全6回) 一年の労をねぎらい、新しい一年の始まりを祝う晴れやかな集いにふさわしい6軒へご案内します。
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HOTEL THE MITSUI KYOTO
豊かな水を湛えた水盤に面する「都季」。席からは、17世紀から受け継がれてきた三井家ゆかりの灯籠などをモダンに配置した庭園を一望できる。京の“水”への敬意をフレンチで表現
「ザ ミツイ」という名前は、三井家の本流としての矜恃。二条城のすぐ隣に位置し、登録有形文化財の風雅な門構え、三井総領家の邸宅跡地に2020年開業した、「ホテル ザ ミツイキョウト」には、呉服商として日本の美意識を守り継いできた老舗として、古の都で本物の日本文化を伝えたいという思いが溢れています。
澄んだ豊かな水は私たちが暮らす日本のアイデンティティ。なかでも名水で知られる京都、その水にフォーカスしたフランス料理が「都季」です。「エスコフィエ」の流れを汲む名門、「リッツ・パリ」でエグゼクティブスーシェフを務めた浅野哲也シェフは、フランス人シェフたちが、料理によって硬度の違う水を使い分けるのを見てきました。
そんな経験に基づき、「もし、素晴らしい軟水を持つ京都がフランスにあったら、どんな料理を提供するか」と考え、京都ならではの「水」をテーマにしたフランス料理を目指すように。
京都中のさまざまな水を試し、選んだのが伏見の日本酒の仕込み水。日本のだしからフランスのフォンに至るまで、水をベースにした、現代的かつ食べ疲れない料理を追求するのみならず、京料理のしつらいがもたらす美意識をも取り込んだ料理を提供しています。
【鮭 西京味噌 いくら(左)】西京味噌に漬け込んだ鮭に発酵野菜、桜の木で燻しただしのジュレを添えて。海藻をかたどったチュイルで自然の中での鮭の生態も表現。【向井酒造の酒粕 フォワグラ(右)】「伊根満開」の酒粕を味わったときに、フランス時代にフォワグラにカカオを合わせた記憶が甦ったという。田楽風の仕立ても楽しい。古代米を使った日本酒の酒粕を2年間熟成させた「なれ」をフォワグラに合わせるなど、日本の食材とフレンチの新たな共通項を探る料理は、京都から発信する新しいフランス料理の黎明を感じさせてくれます。
浅野哲也シェフ。下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
都季
京都市中京区油小路通二条下ル二条油小路町284 HOTEL THE MITSUI KYOTO
撮影/大泉省吾 取材・文/仲山今日子 ※ご紹介した料理や食材は、天候や仕入れ状況等の影響で変更になる場合がございます。料金には別途サービス料がかかる場合がございます。予めご了承ください。
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。