無限の可能性がある表現に挑む
ダンスからスタートした僕にとってミュージカルは、手の届かない高尚な世界というイメージがありました。
でも初めてミュージカル作品に出演した『ハウ・トゥー・サクシード』の現場に入ったとき、実は“自分の好きな世界だ”ということに気づけたんです。
ミュージカルにある歌もダンスも僕は大好きで、ダンサーの自分が大切にしてきたことと同じだと実感しました。
そんな僕が最も好きなナンバーは『ウエスト・サイド・ストーリー』の「クール」です。ジェローム・ロビンスが振り付けした作品は多くのダンサーにとって憧れなので、2020年に自分がこのナンバーを歌って踊ることができたのは大きな出来事でした。
今回僕が出演する『ダブル・トラブル』は、ショービジネスが盛んだった1960年代のハリウッドでミュージカル映画の曲作りをするというところから物語が始まります。
タップダンスやシアタージャズといった“ザッツ・エンターテインメント”という音楽の雰囲気が漂っていて、前回出演した『ヘアスプレー』も1960年代ですし、そこにも縁を感じています。
僕と水田航生くんだけで何役も演じ分けますが、中には女性もいます。音程に高低差があって女性らしいファルセットのやわらかい部分もあれば男性の声色もキャラクターによって差を作っていくという普段のミュージカルにない作業も必要です。それが新鮮でやりがいがあるんです。
しかもキャストのパーソナルな部分が思わず滲んでしまう。そこに無限の可能性があって僕らの独自の世界になると信じています。
日によっても変わっていきますし、いろんな発見もある。知れば知るほど面白さが深まるので、ぜひリピートして何度も味わっていただきたいです。
上口耕平(うえぐち・こうへい)
1985年、和歌山県生まれ。2002年テレビドラマ『ごくせん』で俳優デビュー。幼少時からダンスを始め、高校時代には全国規模のダンスコンテストに入賞するという実績を持ち、切れのあるダンスには定評がある。近年はミュージカルを中心に活躍しており、出演作品には『ダンス オブ ヴァンパイア』『天使にラブ・ソングを〜シスターアクト〜』『ウエスト・サイド・ストーリーSeason 2』『屋根の上のヴァイオリン弾き』『RENT』『ヘアスプレー』など多数。
ミュージカル『ダブル・トラブル=2022-23冬=』
ミュージカル映画の曲を書くという好機をつかんでブロードウェイからハリウッドにやってきた作曲家の兄・ジミーと作詞家の弟・ボビーのマーティン兄弟。曲作りに与えられた僅かな時間に起こるドタバタ劇だ。たった2人の出演者とピアノの演奏だけのシンプルな構成で、およそ10人もの登場人物を2人が演じるというコメディミュージカル。
今シーズンはTeamEの上口耕平と水田航生のほか、浜中文一と室 龍太のTeamD(~2023年1月21日/自由劇場、2023年1月26日~29日/新国立劇場 小劇場)も上演される。
自由劇場2022年12月23日~2023年1月22日
8800円(全席指定)ほか
チケットスペース:03(3234)9999(平日10時~15時 ※12時~13時を除く)
URL:
https://www.musical-wtrouble.jp/ 表示価格はすべて税込みです。
構成・文/山下シオン
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。