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更年期以降の女性は脂質異常症になりやすい体に。コレステロールが増えても慌てないで!

2022.12.28

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天野惠子先生のすこやか女性外来 第8回(02)多くの女性が「コレステロール」「中性脂肪」という言葉に敏感に反応しがちなのは、肥満のイメージが強いからでしょうか──。確かに増えすぎると問題ですが天野先生によれば「どちらも欠かせない栄養素。女性にはそれほど悪さをしない」とのこと。今月も性差をベースに、“女性の脂質異常症”について教えていただきます。前回の記事はこちら>>

コレステロールも中性脂肪も必要な栄養素
女性の脂質異常症は、過剰に怖がらなくて大丈夫


天野惠子(あまの・けいこ)先生
天野惠子先生

静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。

コレステロールは細胞膜の材料。中性脂肪はエネルギー源。
どちらの脂質も大事な栄養素


コレステロールは健康な体をつくり、活動するために欠かせない脂質。中性脂肪は体温を保ち体を動かすエネルギー源です。

いずれも血中に適量存在していればよいのですが、コレステロールを運ぶLDLの値が高くなり、回収するHDLの値が低くなると、余ったコレステロールが血管壁に蓄積して酸化し、血流を滞らせ動脈硬化を進ませます。

また中性脂肪が増えすぎるとHDLがつくられにくくなり結果的にLDLが増えていきます。

●どちらも体に必要な「脂質」。増えたり減ったりすると悪影響を及ぼす
コレステロールと中性脂肪の働き


コレステロールと中性脂肪の働き

●脂質異常症診断の基準値と病名


脂質異常症診断の基準値と病名

*総コレステロールからHDLコレステロールを除いた値。LDLコレステロール以外の悪玉も含む"総悪玉コレステロール"の値を示す。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』(日本動脈硬化学会)より作成

エストロゲンがなくなる閉経後は悪玉が増え、善玉が減る
総コレステロール値は男性を上回る


血液中のLDLは細胞表面にある「LDL受容体」にくっついて、主に肝臓の細胞内に取り込まれます。

女性ホルモン・エストロゲンにはLDL受容体の数を保って血液中のLDLの増加を抑え、回収係のHDLを増やし、中性脂肪も抑える働きがあります。

そのためエストロゲンの恩恵がなくなる更年期以降は、自ずと血液中のコレステロールや中性脂肪が増えていき、女性も脂質異常症になりやすい体に変わっていきます。

●女性は50~60代でピークを迎え男性を追い越す
加齢に伴う総コレステロール値の変化(男女比較)


コレステロール

千葉県22市町村基本健康診査(平成15~18年度。男女合わせて延べ36万6862人のデータ)の結果より平成18年度の数値を取り出してグラフ化(千葉県基本健康診査データ収集システム確立事業)。

心配しすぎないで。女性はLDLコレステロール値が高くても冠動脈疾患は増えない


高コレステロール値は動脈硬化が進む一つの要因ではありますが、女性は必ずしも狭心症や心筋梗塞など冠動脈疾患のリスクが高まるわけではないことが疫学調査から明らかになっています。

下の図のように、女性の場合、喫煙や糖尿病がそのリスクを大きく高めるのに対して、高LDLコレステロール血症はほとんど関与しません。数値の程度にもよりますが、すぐに薬が必要ではない場合も多いので心配しすぎないことです。

●女性の高LDLコレステロール血症は心筋梗塞の発症リスクを高めない
急性心筋梗塞の危険因子(オッズ比)


急性心筋梗塞の危険因子(オッズ比)Circulation Journal 2006;70:513-517より改変

家族性高コレステロール血症とは


家族性高コレステロール血症とは

閉経前の若い頃からLDLコレステロールの値が高いときは遺伝的素因から発症する「家族性高コレステロール血症」が疑われる。専門医を受診し早期診断・早期治療を。




*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:http://www.nahw.or.jp/hospital-info

*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。

公式サイト「女性外来オンライン」:https://joseigairai.online/

YouTube「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>>

天野惠子先生のすこやか女性外来

1「更年期は女性の体の“変化のはじまり”」
1−1 更年期と“その後”の元気のために、体の変化を知りましょう
1−2 女性の健康の守り神・エストロゲンがゼロになったら、生活習慣で補いましょう
1−3 更年期の不調や病気予防に! 女性医療の先駆者が教える生活習慣の「基本5か条」
1−4 女性外来を訪ねて「伊豆美レディスクリニック」

2「だるさ、頭痛、冷え、動悸も。更年期の不調は全身に」
2-1 10年間、我慢するのはもったいない。自分に合う対処法を見つけましょう
2-2 更年期の症状が全身に出るのはなぜ? 訴えの多い10の不調と対処法
2-3 更年期症状の程度を知り、適切な対処法を。専門医も使う簡易テストでセルフチェック!
2-4 女性外来を訪ねて「春日クリニック」

3「不眠、イライラ、うつ、思考力低下。更年期は心も脳も不安定」
3-1 不眠、イライラ、うつ、思考力低下…。更年期のメンタルの不調を正しく知ろう
3-2 更年期のメンタルヘルスを左右する3つの物質とは。減少すると起こる不調は?
3-3 更年期のメンタルを改善するには? 症状に応じた漢方薬や生活習慣の見直しを
3-4 女性外来を訪ねて「こころとからだの杉本クリニック」

4「女性の元気を支える“骨・筋肉・血流”の三本柱」
4-1 更年期以降の人生を健やかに過ごすには、“骨・筋肉・血流”の三本柱が大切です
4-2 骨量と筋肉量は何歳からでも改善できる! まず年齢による変化を知りましょう
4-3 脳と心臓の健康を保つカギは「血流」。動脈硬化を防ぐために注意したい3つのリスク
4-4 女性外来を訪ねて「和歌山ろうさい病院 女性専門外来」

5「骨粗しょう症を予防し、“転んでも折れない骨”をつくる」
5-1 骨粗しょう症を予防するために、骨量維持は更年期女性の重要な“ミッション”!
5-2 “女性であること”が骨粗しょう症のリスク!? 骨量減少に気づくために5年に1度の骨密度検査を
5-3 骨は自分でつくるもの。骨粗しょう症を防ぐために、実践したい食事と運動とは?
5-4 女性外来を訪ねて「アットホーム表参道クリニック」

6「“高血圧なんて関係ない”は大きな間違い。今から減塩を」
6-1 自分には関係ないと思っていませんか? 更年期以降、誰にも高血圧のリスクが生じます
6-2 加齢とともに女性の血圧は3段階で変化します。自分の“高血圧リスク”を知って対策を
6-3 血圧を下げるための7か条とは? 自然に減塩できる野菜スープのレシピも
6-4 女性外来を訪ねて「山梨県立中央病院 女性専門家」

7「心筋梗塞や狭心症のリスクを高める女性の糖尿病」
7-1 女性の糖尿病は男性以上に高リスク! 更年期以降は血糖値を上げない生活を
7-2 血管に及ぼす影響は大! 女性こそ注意すべき「糖尿病」とはどんな病気?
7-3 自分の“糖尿病リスク”を知って、今から対策を! 実践したい生活習慣もご紹介
7-4 女性外来を訪ねて「ソフィア北円山クリニック」

8「女性の脂質異常症は、過剰に怖がらなくて大丈夫」
8-1 コレステロールも中性脂肪も必要な栄養素!? 性差で考える“女性の脂質異常症”
8-2 更年期以降の女性は脂質異常症になりやすい体に。コレステロールが増えても慌てないで!
8-3 動脈硬化の程度を知って、薬の前に生活習慣改善(2023年1月5日公開予定)
8-4 女性外来を訪ねて「順天堂大学医学部附属浦安病院 女性専用クリニック」(2023年1月11公開予定)
イラスト/佐々木 公〈sunny side〉 取材・文/浅原須美

『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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