【父子共演】松本幸四郎、市川染五郎
2022年を語る
松本幸四郎(まつもと・こうしろう)1973年東京都生まれ。2代目松本白鸚の長男。1979年歌舞伎座『俠客春雨傘』で3代目松本金太郎を襲名し初舞台。1981年歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』で7代目市川染五郎を襲名。2018年歌舞伎座、高麗屋三代襲名披露公演「壽 初春大歌舞伎」で10代目松本幸四郎を襲名した。市川染五郎(いちかわ・そめごろう)2005年東京都生まれ。10代目松本幸四郎の長男。2007年歌舞伎座『俠客春雨傘』で初御目見得。2009年歌舞伎座『門出祝寿連獅子』で4代目松本金太郎を襲名し、初舞台。2018年歌舞伎座、高麗屋三代襲名披露公演で8代目市川染五郎を襲名した。映像作品と舞台作品に学びを得た貴重な日々
「思い入れのある役ばかりを演じた一年でした」── 松本幸四郎
── 2022年は幸四郎さんがTBS『マイファミリー』、染五郎さんがNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演されましたがお互いにどんな感想をお持ちですか?
幸四郎 息子が三谷(幸喜)さん作の大河ドラマに出演できたことに、こんな幸せなことはないなと思って見ていました。だから僕は“面白い”って感想をいうばかりで、特にアドバイスとかはしてないよね?
染五郎 そうですね。父からは何もいわれていませんでしたが、演出のかたから、役についてすごく細かく教えていただきました。僕が演じた源 義高という人物は歴史的にフォーカスされてきた人ではないし、僕も知らなかったので、最初は捉えにくかったんですけど、撮影していくうちにその人物像を摑んでいくことができました。
幸四郎 現場で演出をはじめとした皆さんから、いろいろと引き出してもらっているんだなっていうことをすごく感じることができました。僕も久しぶりの現代劇で、幸四郎としては初めてのドラマ出演でした。
染五郎 父が現代劇のドラマに出ているのを観たのは久しぶりだったので、それが新鮮でしたね。僕はそれまで日本のドラマをリアルタイムで観たことがあまりなかったんですが、話の内容が面白くて、翌週までどうなるかわからないというわくわく感を味わったのも初めてでした。
幸四郎 舞台作品は公演が始まるまで練り上げて、練り上げて、幕が開いたら閉まるまでは何があっても止まらないものですが、映像は何秒、何秒という秒の積み重ねなので瞬発力が求められます。その瞬間的な集中力が必要だなと思いました。
染五郎 それには僕も同感です。歌舞伎では3、4日の稽古があって、その日にダメだったことをもう一回自分の中で整理して次の稽古に持って行くことができます。映像では基本的に同じシーンを繰り返して撮ることはないので、一つのシーンがあればそのシーンの空気感とかをその場で捉えてその場で表現しなければならないというのが舞台と違って難しかったですね。