がんまるごと大百科 第1回【基礎知識編】(03) 働き盛りの女性は、男性よりもがんにかかるリスクが高いことをご存じですか。本連載では、1年にわたり予防から治療までがんの情報をまるごと取り上げます。第1回は、女性のがんの罹患状況を正しく認識するための基礎知識編です。
前回の記事はこちら>> 女性の2人に1人はがんにかかる時代です
若尾文彦(わかお・ふみひこ)先生国立がん研究センター がん対策研究所 事業統括。横浜市立大学医学部卒業。1988年、国立がんセンター中央病院に入職。放射線診断部医長、がん対策情報センターセンター長などを経て、2021年より現職。信頼できるがん情報の発信と普及、がん対策評価などに取り組む。できるだけ早期に見つけてがんを治療することが大事
1981年から、がんは日本人の死因のトップであり続けているものの、がん診療連携拠点病院などがんの診療体制や設備が整っている医療機関で治療した患者の生存率データでは、全がんの5年生存率が67.5パーセント、女性に限ると71.8パーセントと長生きする人も多くなっています。
「世論調査では7割を超える人がこの事実を知りませんでしたが、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんでは、Ⅰ期(がんの進行度を表すステージのうち初期の段階)で見つかった場合、95パーセント以上の人が助かっています」(下グラフ参照)。
●早期発見なら多くのがんで80~90パーセントが助かる
5年相対生存率/院内がん登録 2013~14年診断
※乳、子宮頸以外は男女計の値なかには最初から悪性度の高いがんも存在しますが、5年生存率のデータを見ると、できるだけ早期に見つけて治療することが大事であることがあらためてよくわかります。
「がんが発生してから1センチの大きさになるまでに約20年かかるといわれています。しかし、そのがんが2センチの大きさになるのはたった1~2年です。この1センチから2センチの大きさになる期間、つまり上皮内がんからステージⅠ期の間に発見されることが極めて重要なのです」と若尾先生は強調します。
ちなみに国民生活基礎調査をもとにがん検診の受診率を調べた2019年のデータによると、40~69歳の女性の乳がん検診率は47.4パーセントと半数を超えず、大腸がん検診率(40.9パーセント)、肺がん検診率( 45 .6パーセント)、胃がん検診率(37.1パーセント)はさらに低い受診率となっています。
「これらの数字からも、自分には関係ないという一般の人のがんに対する認識不足が窺えます」と若尾先生は指摘します。
がんは生活習慣とのかかわりが深い病気であることもわかっています。将来のリスクに備えるには、がん検診のほかに日常生活での予防も大切です。次回は、遺伝子を傷つけるリスク因子となる生活習慣と予防法のうち科学的に有効性が判明している方法を中心に役立つ情報をお届けします。
【がんの正しい情報はどこに?】
「がん情報サービス」のサイトでは科学的根拠に基づいた情報を発信
がんを正しく認識するために信頼できる確かな情報源を知っておくことが必要です。国立がん研究センターでは「
がん情報サービス」と呼ばれるインターネットサイトを運営し、科学的根拠に基づいた正しい情報の発信に努めています。同サイトには治療や療養に加え、予防や検診に関する情報も掲載されています。
がんの相談をしたいときは、がん診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」を利用するのもよいでしょう。その病院にかかっていなくても電話や対面による相談が無料で受けられます。「がん情報サービスサポートセンター」では電話で最寄りのがん相談支援センターを探すお手伝いもしています。
最寄りのがん相談支援センターを探すがん情報サービスサポートセンター
TEL:0570-02-3410(ナビダイヤル 平日10時~15時)
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『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。