平戸・松浦家のお正月 最終回(全4回) 古より大陸との交流の玄関口として繁栄してきた、長崎県北部に位置する港町・平戸。この地を延久元(1069)年より明治まで長く治めてきたのが、現当主で41代を数える旧大名家・松浦(まつら)家。2000年1月号掲載の「大名家の正月」の再録に新規取材を加え、大名家でかつて行われていた剛直かつ厳かな年迎えをご紹介します。
前回の記事はこちら>> 亀岡神社の例大祭・献茶式にて「和の心を伝えて参りたい」
旧平戸藩松浦家第41代当主
松浦 章氏亀岡神社の例大祭の後、拝殿にて行われた献茶式で茶を点てる茶道鎮信流宗家、松浦 章(宏月)氏。門人たちが見守る中、宮司によりご祭神に献じられた。平戸城内にあり、松浦家の始祖となる源融公から第40代素(もとむ)公まで、歴代の松浦藩主をご祭神として祀る亀岡神社。
毎年10月24日から27日まで行われる例大祭は「平戸おくんち」として知られ、さまざまな神事が行われます。なかでも江戸元禄期、第29代鎮信公の頃、家臣の橘(たちばな)三喜(みつよし)が完成させたとされる平戸神楽は、この時のみ全24番のすべてが舞われ、境内は多くの人で賑わいます。
亀岡神社の例大祭にて、衣冠束帯の威儀を正した松浦 章氏。亀岡神社は、平戸藩最後の藩主、第37代詮公により松浦家祖廟である霊椿山神社と郷社3社が合祀され、明治13年に新築遷座された。松浦家当主の章氏も毎年西下し、神事に参列。その後、松浦家御家流・茶道鎮信流の宗家として献茶式を執り行います。2022年の例大祭は始祖・源 融公生誕1200年を記念したものとなり、拝殿内に松浦家所蔵の御真影が掛けられました。
「松浦家の家訓に、ご先祖さまを祀るのは当主の第一義である、という意の言葉があります。日本の武家文化を色濃く残すこの家に生まれて、具体的なものを残すのが松浦史料博物館であり、精神を残していくのが鎮信流茶道だと思っております。昔のことを知り、体験した人が次第に少なくなる中で、私は日本文化、和の心を次代に伝えて参りたく思っています」と章氏。
大名家の古来の伝統は、これからも平戸の地で確かに継承されていくことでしょう。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 撮影/三笘正勝 取材協力/萬 眞智子