365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> キバナセツブンソウ
黄色の丸い花と、それを取り囲む葉。早春の球根植物では珍しく、みずみずしさを感じさせる花姿です。■属科・タイプ:キンポウゲ科の秋植え球根
■花期:2月〜3月
■草丈:5〜10cm
地面に輝く黄色の花、見つけてください!
ちょうど節分の頃に咲くセツブンソウから少し遅れて咲き出すのがキバナセツブンソウです。セツブンソウの色違いというわけではなく、同じセツブンソウ属の仲間で、日本では主にヨーロッパ原産の交配種が出回っています。まだ枯れ葉の積もった地面から顔を出し、光沢のある明るい黄色の花をパカッと咲かせているのを見つけると、春が近づいていることを実感してわくわくしてきます。
キバナセツブンソウは花が上向きに咲くので、茶色の地面を背景にその姿が遠くからでもよく目立ちます。上から眺めるとセツブンソウよりも丸いふっくらした形もよくわかり、なんと愛らしい花かといつも見入ってしまいます。
仕事で冬季閉園中の観光ガーデンを2月中旬に訪ねたとき、まだ色彩の乏しいガーデンでひときわ目立っていたのがキバナセツブンソウでした。地面に点々と広がる黄色の花を追い、しゃがんだままの姿勢で移動しつつ夢中で撮影したので、あとで膝が痛み出し…。これを見るだけでも価値ありなので、冬季もオープンしてくれればいいのにーと思いました。
キバナセツブンソウは球根植物ですが、クロッカスのようなシャープな葉ではなく、花のすぐ下に花を取り囲むように葉がつきます。葉色が明るいせいか、花姿全体にみずみずしさが感じられるのが、この花の大きな特徴ではないかと感じます。
花を咲かせたあと、しばらくは葉を茂らせますが、6月には地上部が消えてなくなり、休眠に入ります。このような生育サイクルの植物を春植物、
スプリングエフェメラルと呼びますが、早春にぱっと華やかに咲き、その後は消えてなくなる一瞬の美しさだからこそ、魅力を感じずにはいられません。一瞬の輝きを逃さないよう、散歩道でも探してみてください。
栽培の難易度
球根の植えつけ適期は9月〜10月。夏季に休眠することを考え、春は日差しがよく当たり、夏には強い直射が遮られるような場所に植えつけます。落葉樹の下などが向いています。植えつけ前に球根を一晩水に浸しておくと、発芽しやすくなります。植えつけの深さは球根の2倍程度が目安です。植えつけ時に元肥を施せば追肥の必要はありません。また、地植えの場合は水やりも雨まかせでかまいません。花後は葉が枯れるまでそのままにしておきます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。