365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ヘレボレス・オリエンタリス
よく出回るクリスマスローズは、原種も含め、さまざまな品種と交配されたガーデンハイブリットと呼ばれるもの。これは八重咲きで花弁に葉脈のような線模様が入るタイプです。ふんわりとした花がうつむきがちに咲き、花をのぞき込むと美しい線模様。ため息が出ました。■属科・タイプ:キンポウゲ科の宿根草
■花期:1月〜3月
■草丈:10〜50cm
育種から生まれたさまざまなタイプに出会えます
12月から咲き出すヘレボレス・ニゲルに続き、ヘレボレス・オリエンタリスが続々と咲き出しています。日本ではその両方をさして、クリスマスローズと呼んでいます。
オリエンタリスはキリスト教のレント(四旬節)のころに咲くことから、レンテンローズという英名で呼ばれることもあります。レントとは復活祭前の46日間を指します。2月上旬から3月中旬と、ちょうどオリエンタリスの花期と重なります。
クリスマスローズにはピンクや紫、白、黒、黄などの花色があり、いずれも大人っぽいシックな色合いが魅力的です。ところが、ガーデンセンターでクリスマスローズの苗を見ると、品種名がついていないことが多くあります。
それにはクリスマスローズならではの特別な事情があります。クリスマスローズは株分けや挿し芽で大量に増やすことが難しく、時間をかけてタネから栽培するのですが、育った株が前年と同じ色、形の花を咲かせないことも多いのだそうです。
その年に咲く花は、苗についている花や蕾で判断できますが、翌年は花色が変わる可能性もあるということ。そのため、品種名をつけずに出回るのだそうです。
でも、ガーデンセンターではちゃんと品種名がつけられたクリスマスローズも並んでいますよね。それはメリクロン苗といって、植物の成長点を摘んで培養して育てたもので、この方法なら確実に同じ株を増やすことができます。この苗にはよく写真付きのラベルが貼られていますが、これには「写真と同じ花が翌年も咲きます」という特別な意味が込められています。
クリスマスローズがこれだけ広く普及したのは、寒さに強く、手間をかけなくても年々株が大きくなってたくさん花を咲かせるという丈夫な性質によるところも大きいと思います。観光ガーデンで、また散歩道で、冬から早春の花が少ない時期に咲くクリスマスローズを見かけるたびに、その優雅で慎み深い姿に心を打たれます。
ごく淡い緑がかる白い花弁にえんじ色のブロッチ(斑点)が散る八重咲きタイプ。アップで写真を撮りたくなる美しさです。栽培の難易度
高温多湿が苦手なので、明るい日陰の水はけがよい土壌に植えます。植えつけ時に元肥を施し、毎年10月くらいに緩効性肥料を追肥します。6月〜9月までは半休眠状態となり、肥料の吸収が少なくなるので、涼しい気候になってから追肥するのが効果的。地植えの場合は、水やりは雨まかせでかまいません。花が終わったら花茎の根元から切り取ります。また、黄色くなった葉や枯れた葉も取り除きます。ウイルス病にかかると一気に近くにある別の株にまで感染するので、もし葉に斑点が出るなど異常が出た場合には、株ごと抜いて処分するのがおすすめです。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。