構築的で美しいけれど、歌うのは大変!
森 麻季(Mori Maki)東京藝術大学、同大学院独唱専攻、文化庁オペラ研修所修了。日本を代表するオペラ歌手として数々の舞台に出演。伸びのある美しい歌声で、ヴィオレッタ役も幾度となく演じている。写真/小島由起夫ヴィオレッタはとてもハードな役です。出ずっぱりですし、各幕で要求されるものが違うし、技術力の高さも必要です。低音から高音までまんべんなく、正しいフォームで歌えないと成り立たないのですが、それができると俄然光ってくる。ヴェルディの音楽は構築的で、骨格がしっかりしていて、さらにメロディが美しい。
でも歌うのは大変! 特にヴィオレッタは、この役が歌えると他の役もできる、そんな役ですね。年も重ねたので、声楽的には以前は難しかった中低音や深い音色を歌いわけることができるようになったと感じていますし、ヴィオレッタの厳しい人生や彼女の孤独、彼女のつらさにより思いを馳せるようになりました。
死と隣り合わせなのに前向きに健気に生きている。最後まで自分にできることをして、自分に接した人を大切にした女性だと思います。
ヴェルディのオペラは深いですよね。哲学的というか。人生の困難をどう乗り越え生きていくかということを、教訓として残したいという意志を感じます。それは今の時代でも共感できる、普遍的なものなのではないでしょうか
取材・文/加藤浩子 編集協力/三宅 暁(編輯舎) 取材協力/日本ヴェルディ協会 市浦純子
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。