365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ヒヤシンス
ヒヤシンスといえば印象的なのが美しい青花です。これは青花を代表する‘デルフトブルー’というダッチヒヤシンスの品種。ボリューム感のある花穂が見事。■属科・タイプ:キジカクシ科の秋植え球根
■花期:3月〜4月
■草丈:15〜30cm
爽やかで上品な香りをかぐと心が落ち着きます
スイセンに続き、香りが魅力の秋植え球根が咲き出します。ヒヤシンスの香りは爽やかで心地よく、私はその上品な香りが大好きです。強すぎず主張することなく、誰をも心地よくする香り…。
香水などの香り成分に使われる分類では、ヒヤシンスの香りはグリーンノートにあたり、青葉を思わせる爽やかな香りだそうです。グリーンノートの主成分はフェニルアセトアルデヒドで、ヒヤシンスにその成分が含まれていることから、ヒヤシンスアルデヒドとも呼ばれます。
観光ガーデンでもヒヤシンスを咲かせているところが多くありますが、以前ガーデナーさんに伺ったところ、魅力的な香りがお客さまに届くように花壇の最前列や園路沿いのいちばん手前に球根を植えつけるそうです。
球根3〜5球くらいを固めて植えると、花色がよく目立つと同時に、香りにもボリューム感が出てお客さまに届きやすくなる、と話してくれました。花の香りもちゃんと考えて、花壇はデザインされているのだなぁと感心しました。
ギリシャやシリアなどが原産のヒヤシンスには、ボリューム感のあるダッチヒヤシンスと、野草のように楚々とした雰囲気のローマンヒヤシンスがあります。よく出回るのはダッチヒヤシンスですが、野の花アレンジを楽しんでいる友人に言わせると、頭が重くてアレンジしにくいのが難点なのだとか。
ところが植えっぱなしにして翌年また咲かせると、程よいボリュームになり、他の花とも合わせやすくなるのだそうです。その話を聞いて以来、2年目のヒヤシンスのかわいらしさにも注目するようになりました。散歩の途中で花穂が短く、花数が少ないヒヤシンスに出会うと可憐なその姿に思わず「2年目ですか?」と尋ねたくなります。
ユキヤナギの白を背景に、濃淡ブルーのヒヤシンスが並び咲く景色の美しさにうっとり。ヒヤシンスの足元にはムスカリも咲き始めています。栽培の難易度
耐寒性が強く、積雪のあるエリアでも栽培可能です。球根の植えつけ適期は10月〜11月。元肥を施した土壌に、球根2個分の深さに植えつけます。必ず芽が出るほうを上に向けます。植えつけ時にたっぷり水やりし、その後は土壌がからからに乾燥したら水やりをします。花が終わったら、花茎を残して花がらだけを摘み取ります。葉は枯れるまでそのままにし、梅雨入り前に球根を掘り上げ、乾燥した場所で秋まで貯蔵します。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。