衣装協力:トップス3万8000円、パンツ3万8000円/ともにJOHN SMEDLEY(リーミルズ エージェンシー)実感して演じることで見出せた作品の本質
「2年前よりも、今の自分だからこそ台詞に実感が得られます」── 小栗 旬
「一つの役を1年5か月という時間をかけて最初から最後まで演じきることができるのは、国内のどこを探してもここにしかありません。それを無事に完走でき、悔いなく終えられたのは僕にとって本当に幸せなことでした」と語るのはNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で北条義時という人物を体現した小栗 旬さん。
一点の曇りもない眼差しだった純朴な青年が、執権としての厳しい決断を重ねていくうちに抱いている複雑な感情が表情に表れ、その生き様を深く描いたことで注目を集めた。
そんな彼が次に挑むのは、シェイクスピアの戯曲『ジョン王』である。故・蜷川幸雄さんが手がけてきたこのシリーズに小栗さんが初出演したのは2004年に上演された『お気に召すまま』のとき。
2020年にコロナ禍で白紙となった本作への出演が実現することにはどんな思いを抱いているのだろうか。
「当時20代前半だった僕にとって、蜷川さんとの作品創りは、とても刺激的な場所でした。稽古場には緊張感がありつつも、蜷川さんはものすごい愛情を持って、僕という俳優をどういうふうに育てていくかを考えながら向き合ってくださいました。今の自分にある軸みたいなものは、蜷川さんに作ってもらったと思っています。実は蜷川さんが亡くなられた年に『ハムレット』でご一緒する予定だったのですが、それが叶わなかったことが自分の中でずっと引っかかっていました。そんなときに(吉田)鋼太郎さんが蜷川さんの遺志を継いで残りの5作品を演ると聞いて“僕を出してください”と話して、決まったんです。
『ジョン王』は歴史劇で、全編がほぼ戦争をしている話なので、今の状況からすると、おそらく誰もがウクライナのことを連想すると思います。戦争の壮絶さや戦争によって生まれる悲しみなどの感情を『ジョン王』という作品を通して突きつけることができるのではないでしょうか。2年前に比べたら確実に自分たちの意識にあることなので、どれだけ身近に感じてご覧いただけるのか。僕自身も特に1幕目の中盤でしゃべる台詞を、2年前の自分よりも今の自分のほうが実感を持っていえると思ったんです。この作品とはそういうめぐり合わせでもあったのかなとも感じています」