オリジナルミュージカルの醍醐味
僕が出演作で特に印象に残っているのはウエストエンド作品の『ブラッド・ブラザーズ』です。
イギリスの演出家のグレン・ウォルフォードさんからは「稽古場は試す場所なんだから、たくさん失敗してもいい。だから毎回何か違うことを演ってくれ」と求められ、“芝居ってこんなに自由でいいんだ”という演劇が可能性を秘めたものであることを強く感じた作品でした。
『チェーザレ 破壊の創造者』は今回が初演のオリジナルミュージカルです。
「これだと台詞が入らないね」とか、「ここはもっとドラマティックにしたほうがいい」とかアイディアを持ち寄ることができるのが、オリジナルミュージカルの強みです。音楽も一緒に変えていけるので、ゼロから一つの作品を創っているという実感がすごくあります。チェーザレ役のアッキー(中川晃教)とミゲル役の橘ケンチさんと3人で話す機会があって、台本をいろんな角度から見て、互いの考えを共有することができました。
島 健さんが全曲を作曲されているんですが、とてもメロディアスで王道を押さえていると思いました。今の音楽というよりクラシカルな部分もあるので、作品の世界観に寄せていった部分は大いにあるのではないでしょうか。
僕が演じるのは『神曲』で知られるダンテですが、本作でチェーザレに影響を与える人物であることは間違いありません。ダンテがどういう思想を持って取り組んで、その結果200年後のチェーザレという人の心に刺さっていくのかということが重要だと思っています。
コロナ禍でいったん中止になったので、今は悔しい思いを乗り越えて、2023年の世の中に届けていくことの意味を提示できたらいいなと思います。
藤岡正明(ふじおか・まさあき)
1982年、東京都生まれ。2000年にテレビ東京のオーディション番組「ASAYAN 超ヴォーカリストオーディション」の出場を機に、2001年にSony Music International からデビュー。2005年ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢され、ミュージカル界に進出。2008年『ミス・サイゴン』のクリス役ほか、多数の作品に出演。ストレートプレイや映像作品と活動の幅を広げ、活躍している。自らの演劇ユニット「青唐辛子」では脚本、音楽、演出、出演のすべてを手がけ、その多才ぶりを発揮している。
ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』
©惣領冬実・講談社/ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』製作委員会ルネッサンス期のイタリア半島で活躍した英雄・チェーザレ・ボルジアの物語を描いた惣領冬実の大ヒット歴史漫画を初ミュージカル化。ピサの大学に在籍するチェーザレは父・ロドリーゴをカトリックの最高位である教皇の座につかせて、自身の理想を実現させるべく頭脳戦に身を投じていくのだが......。
明治座が創業以来初となるオーケストラピットを稼働させ、生演奏で上演。出演は中川晃教、橘ケンチ(EXILE)、別所哲也、藤岡正明、今 拓哉、丘山晴己、横山だいすけ、岡 幸二郎ほか。
明治座~2023年2月5日
S席1万3000円(全席指定)ほか
明治座チケットセンター:03(3666)6666(10時~17時)
URL:
https://www.cesare-stage.com/ 表示価格はすべて税込みです。
構成・文/山下シオン
『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。