世界中に愛されるその秘密 ルイ・ヴィトンのある暮らし 第12回(全14回) 旅にまつわるラゲージからその歴史を始めた「ルイ・ヴィトン」。その後、ファッション、ジュエリー、アートと、常に時代を牽引し、新しいライフスタイル “文化”を作り上げてきました。ルイ・ヴィトンが、なぜこれほど世界中の人々から愛され続けるのか。創業者の生誕200周年を迎え、さらなる進化を続けるその魅力を、パリ特別現地取材を含めご紹介します。
前回の記事はこちら>> メイド・トゥ・オーダーから新作まで。“香水の聖地”グラースで創られるルイ・ヴィトンの香りが“特別”である理由に迫りました。
〔中東の香りにオマージュを捧げた神秘的で甘美な砂漠の夢〕ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュードが魅了された中東の香りの文化からインスピレーションを得て、2018年に誕生したコレクション。左・新作の「フルール・ドュ・デゼール」 ジャスミン、オレンジブロッサム、ローズ。砂漠に咲く奇跡の花々を思わせる、ネクターのようなほのかな甘さが、ウード(沈香)の奥深さの中に咲く。5万600円 中・「ニュイ・ドゥ・フ」 砂丘の谷間から立ち上る薫煙をウードで表現した神聖な芳香。5万600円 右・「オンブレ・ノマド」古くはアラブの王族しか楽しめなかった希少なウードを凝縮してデザインされた神秘的な香りが砂漠への旅へと誘う。5万600円 トラベルケース 8万3600円/すべてレ・パルファン ルイ・ヴィトン オー ドゥ パルファン(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)「香りでエモーションを交換したい。
俳句を作るように」
Jacques Cavallier Belletrud(ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュード)
ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュードフランス南部、グラース生まれ。祖父、父ともに調香師。パフュームメーカーに就職し「ロードゥ イッセイ」などで名声を得る。2012年にルイ・ヴィトンのインハウス・マスター・パフューマーに就任。16年に初のウィメンズ・コレクションを発表。©LOUIS VUITTON香りとは人生そのもの、感覚の起点にあるものです
“香水の聖地”南仏グラースにあるルイ・ヴィトンのフレグランス工房で、個性的で質の高い香りを創り出しているのがインハウス・マスター・パフューマーのジャック・キャヴァリエ・ベルトリュードです。祖父から続く調香師の家系で、自らも8歳の時に進路を決断したという彼に、まず香りの魅力について聞きました。
「それは、人生そのものです。毎日の生活の中でも無意識のうちに香りの分析を脳は行っているのです」。
父親から香りの英才教育を受け、香水メーカーで多数の名香を創ることで名声を得た彼がルイ・ヴィトンに迎え入れられたのは10年前。
「高い品質、創造性と革新性が素晴らしい。そして、フランスのライフスタイルを体現しているメゾンなのです。フレグランスを創るときも同じです。最良の品質と原料に加え、クリエイターに完全な自由があることも重要ですね。また、グラースの中心地にフレグランス工房を持つ唯一のメゾンでもあり、特別にカスタマイズした原料が調達できるのも強みです」。
近年では顧客をグラースに招き、自分だけの香りを創れるサービス「オート・パフューマリー」もスタートしています(オンラインでのカウンセリングも可能)。
「ルイ・ヴィトンはトランクのメイド・トゥ・オーダーから始まっているので、同じことをフレグランスで行うのは自然なことでした。自分のためだけに調香された香りをまとうことは“究極のシック”を身につけること。日本のかたがたも大歓迎ですよ。女性だけでなく男性もね」。
愛や夢を提供するのがブランドの価値
最後に、時代をリードするブランドとパフュームが描く未来について尋ねました。
「創業者のルイは天才的な発明家で、彼の哲学は現在もメゾンの核として存在しています。ルイ・ヴィトンの価値とは、自然へのリスペクト、革新性、創造性、顧客に対して常に真実を伝えること、他とは違う経験を提供すること、これに尽きます。製品だけでなく、愛や夢を提供しているのです。
ルイ・ヴィトンはラグジュアリーメゾンの中でも最もポエティックで人間性に溢れるブランドだと思っています。私が目指しているのは、パフュームで毎日“俳句を作る”ことなのです。俳句はエモーションを交換するのに素晴らしい手段ですから、私はフレグランスを通してそれを叶えたいと願っています」。
上・グラースの中心地にあるルイ・ヴィトンのフレグランスのアトリエ。歴史ある建物を改装し、2016年に創設。自然光が差し込むクラシックなインテリアが美しい。下左・アトリエはグラースの豊かな自然に囲まれている。下右・特製のモノグラムのトランクに原料のボトルが整然と並べられたアトリエ内部。3点すべて©LOUIS VUITTON 取材・撮影協力/ルイ・ヴィトン 撮影/Fumito Shibasaki〈DONNA〉 取材・文/渡辺三津子
『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。