子を撫でるように、姿やさしい可憐な花ですが、かんかん照りであろうと寒々しい川原であろうと、さらさらと平然と咲く芯の強さ。「唐なでしこ」が中国から伝来したために「大和」をつけて呼ばれるようになりましたが、いつの間にか、やさしく芯の強い女性の代名詞となり、私たちの世代まで誠に自然に日々親しんできた言葉「大和なでしこ」です。
選・文=加賀美幸子(アナウンサー)清少納言は『枕草子』の中できっぱりと言います。草の花は「なでしこ」が良いと。
「やまとなでしこ」とは「カワラナデシコ」のことです。株元近くから折れ曲がるように細い枝を延ばし、一見弱々しく見えますが、何のその! しなるように強く、折れたりしないで跳ね返す強い力、それこそ「大和なでしこ」と言われるゆえんです。
アテネオリンピックで、サッカー日本女子代表の愛称が「なでしこジャパン」。約2700通の応募の中から選ばれたといいます。日本を代表する女子チームに相応しい愛称はプレーする選手たちの夢や目標に相応しく、言葉どおり「なでしこジャパン」の活躍でした。
上代から続く生き方の根元は、花の生き方を通して、今も変わりの無いことを、ナデシコは感じさせてくれます。
イラスト/髙安恭ノ介 ・
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