365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> カナメモチ‘レッドロビン’
3月上旬、新芽がこんなに出て垣根が赤く染まっていてとてもきれい。■属科・タイプ:バラ科の常緑中木
■花期:5月〜6月上旬
1年に何度も真っ赤に染まる新芽が楽しめます
遠くに赤く色づいている木を見つけ、「何が咲いている?」と近づいたら、新芽が真っ赤に染まっていたという経験はありませんか?
新芽が真っ赤に染まるといえば‘レッドロビン’。カナメモチとオオカナメモチの交雑種で、‘レッドロビン’という品種名で出回り、広く親しまれているので、カナメモチという名前を知らない方も多いと思います。
カナメモチは日本を含む東アジアが原産ですが、‘レッドロビン’はアメリカで生まれた園芸品種です。成長がとても早いので、マンションや個人邸の垣根としてよく利用されます。近所の散歩でもしばしば‘レッドロビン’の垣根に出会い、人気のあることを実感します。
さて、特徴的な赤い新芽が見られるのはこの時期だけではありません。少し伸びた枝を剪定すれば新芽が出るので、うれしいことに1年に何度も垣根が赤く染まるのを楽しむことができます。赤い葉はやがて緑色に変わりますが、赤と緑の交じる状態もなかなか華やか。垣根で色彩の変化が楽しめるのは大きな魅力だと思います。
生まれたてのつややかな赤が美しい!新芽は全体が赤く、茎まで赤く染まります。カナメモチは発根性が低く、根付きにくいのが難点ですが、‘レッドロビン’はその点がいく分改良されたのも広く普及した理由でしょう。今ではカナメモチを見つけるのが難しいほど、‘レッドロビン’が圧倒的に普及しています。
初夏には小さな白花が房になって咲くのですが、じつは私が花を見たのはごく数回です。
新芽を促すために剪定を繰り返すことで花芽がついても落としてしまうため、なかなか花の咲いた木を見かける機会がないのです。花を見たい場合は、花芽が形成される早春から開花時期まであえて剪定をしないでおく必要があります。さて、新芽の赤をとるか、花をとるか、と、‘レッドロビン’の垣根のオーナーさんは毎年悩んでいらっしゃるのかもしれません。
栽培の難易度
日当たりがよく、水はけのよい土壌に植えます。発根性はカナメモチよりよいものの、基本的に移植は得意ではないので、育つスペースを確保できる場所を選びます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年以降は2月に緩効性肥料を株元に施します。水やりは雨まかせでかまいませんが、ひどく乾燥している際にはたっぷり水やりします。新芽の発生を促す剪定は、3月〜4月、9月〜10月に行います。刈り込み剪定が基本で、長く伸びた枝をカットして垣根の形を整えます。その際に株の内側の枯れ枝などを取り除き、風通しをよくしておきます。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。