365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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少しクリームがかった白花のハクモクレン。まだ葉の展開しない木にこの大きな白花がたくさんついているとよく目立ち、散歩道で遠目に見つけて走り寄ることもしばしば。■属科・タイプ:モクレン科の落葉高木
■花期:3月中旬〜4月中旬
ふくよかな花を見ているとおおらかな気持ちになります
もう少しすると、ニュースなどでソメイヨシノの開花予報が毎日取り上げられます。その予報を見ながら、じつは私が気にしているのはモクレンが咲き出す頃合です。
私が住む地域では、ソメイヨシノが開花する1週間くらい前にモクレンが咲き出すのです。私はモクレンが大好きなので、ソメイヨシノの開花ばかりが注目され、その少し前に咲き出すモクレンがあまり話題にならないことに、毎年少しもどかしい気持ちを抱いています。
観光ガーデンで見たハクモクレンは相当の樹齢で、全体が白く染まるほどたくさんの花が咲いて見応えのある景色に。早春から魅力的な花木が続々と咲いていますが、モクレンが咲くといよいよ春本番も近いと感じます。
なぜなら、モクレンの花はそれまでに咲く花より格段にサイズが大きく、それが季節の変わり目の合図のように思われるからです。空に向かうように先端がすっとした蕾がまず大きい!それが開いたときの存在感がすごい!ただ、モクレンの花は完全に開ききらないのが特徴で、そのふっくらした状態がなんともふくよかで美しいのです。
サクラと同様に葉が展開する前に花が咲くので、満開になると木全体が紫や白などの花色で覆われ、美しい景色が楽しめます。魅力的な木だけあって人気は高く、昔から個人邸の庭や門前のシンボルツリーとしてよく利用されています。だから、遠くまで出かけなくても近所の散歩でいくつものモクレンが咲く美しいシーンを楽しむことができます。
モクレンは中国原産で、日本には平安時代には渡来していたといわれます。白花を咲かせるハクモクレン、モクレンとハクモクレンの交雑から生まれたサラサモクレンなどが知られますが、最近では欧米で育種が盛んに行われ、黄色の花や樹高がコンパクトに収まるタイプなど、新しい品種が続々と誕生しています。
植えたいスペースに適した品種、建物のテイストに似合う品種を自在に選べるようになり、モクレンはますます人気の花木になっていくのではないかと期待しています。
栽培の難易度
モクレンの中でもハクモクレンはとくに樹高が高くなり、枝が横へも広がるので、スペースが確保できる場所を選びます。日当たりがよく、肥沃で水はけのよい土壌に植えつけます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年以降は、休眠期の1月に株の周りに穴を掘り、緩効性肥料を施します。水やりは雨まかせでかまいませんが、幼木の間は土壌が乾いたら水やりをします。花後、葉が展開する前に伸びすぎたを切り取り、枯れた枝を取り除き、込み合った箇所を間引いて風通しをよくします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。