365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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モクレンとは異なり開ききる花が美しいのがコブシの大きな特徴です。これはコブシとシデコブシの交配種‘バレリーナ’で、波打つような花びらが魅力的な人気品種。甘い香りも楽しめます。■属科・タイプ:モクレン科の落葉高木
■花期:3月中旬〜4月中旬
シデコブシの園芸品種にはかわいい花がいっぱい!
先日紹介したモクレンは中国原産ですが、同じモクレン科モクレン属に日本と韓国の済州島を原産とする仲間がいます。それが日本ではモクレンより古くから知られるコブシです。かつては日本各地の野山に自生し、コブシの開花がタネまきや田植えの時期の目安とされてきました。
よく散歩に行く大きな公園に樹齢60年を超えるであろうというコブシの木があります。高さもかなりあり、横に広げた枝の張りも見事で、花も葉もない冬の間から立派な枝ぶりで存在感を示しています。
その古木が花をたくさん咲かせて白く染まる季節は、言葉にならないほど圧巻の美しさ!近くに住んでいて、その木の花期を毎年見られることに感謝の気持ちでいっぱいになります。コブシの基本種は白花なので、ハクモクレンと間違えがちですが、コブシのほうが花が小さく、完全に開ききるのが特徴です。また、モクレンはほとんどの花が上向きに咲きますが、コブシは上向きのほか左右に向いて咲く花もあります。
モクレンより花が小さいので、コブシのほうが木全体もコンパクトと誤解されがちですが、こぶしは生育力がとても旺盛で、剪定をせずに成長させると10mを超す大木になります。その生育力からモクレンの園芸品種を育種する際の台木としてもよく利用されます。
そんなに大きくなるなら、個人邸のシンボルツリーには不向きと思われるかもしれませんが、じつはコブシにはコンパクトなサイズのシデコブシという種類があります。シデコブシは日本の固有種ですが、最近では国内外で育種が進み、魅力的な園芸品種が豊富に生まれています。
花弁の枚数が多く、繊細な印象の園芸品種はとても魅力的。住宅街を散歩しているとシデコブシの園芸品種をよく見かけるので、ぜひ探してみてください。
コブシの基本種は白花で、ハクモクレンより小ぶりで繊細な印象です。栽培の難易度
耐寒性、耐暑性ともに強く、丈夫な性質です。日当たりがよく、肥沃で水はけのよい土壌に植えつけます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。翌年以降は、休眠期の1月に株の周りに穴を掘り、緩効性肥料を施します。水やりは雨まかせでかまいませんが、幼木の間は土壌が乾いたら水やりをします。花後に伸びすぎた枝を切り取り、枯れた枝を取り除き、込み合った箇所を間引いて風通しをよくします。基本種のコブシは高さも幅も大きく育つので、十分なスペースを確保しておくことが大切です。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。