音楽で届ける人間愛
11歳でデビュー、14歳の頃には大指揮者、レナード・バーンスタインと共演。その最中に2度ヴァイオリンの弦が切れるも演奏を止めず、替わりのヴァイオリンで完璧に弾き切る離れ業を成し遂げ、天才少女として注目された五嶋みどり。
若き日から精力的に演奏活動をする傍ら、20歳で「みどり教育財団」を設立。いわばそのステイタスを活かし、これまで多くの社会貢献事業を実現させてきた。
そんな彼女が近年力を入れて取り組む作曲家が、ベートーヴェンだ。
2020年のヴァイオリン協奏曲に続いて今回録音したのは、ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全集。楽曲に込められたさまざまな感情が、細部まで丁寧に表現されている。
厳格さの背後にある優しさに寄り添うような、しなやかな音が魅力だ。
五嶋は、ベートーヴェンは「多くの問題に毅然と立ち向かう強い信念と道徳心、自制心を持つ人」であり、彼からの教えが「音楽家としての立ち位置を見定める指針となった」としている。
音楽の才能を授かった者としての使命感に通じるものを感じるのだろう。人間愛が音に表れている。
五嶋 みどり(ごとう・みどり)1971年大阪府生まれ。1982年に渡米、ジュリアード音楽院で学び、同年ニューヨーク・フィルとの共演でデビュー。以来、世界で演奏活動や社会活動に取り組む。その社会貢献が評価され、2007年より国連ピース・メッセンジャーを務める。 編集部おすすめ
[CD]
五嶋みどり、ジャン=イヴ・ティボーデ
『ベートーヴェン:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全集』
3枚組 WPCS-13839~41 7590円2020年に発表した「ヴァイオリン協奏曲、ロマンス(2曲)」に続く、ベートーヴェン・アルバム。多くの共演を重ねてきたフランス人ピアニスト、ティボーデと、ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全10曲を収録した、集大成の録音。
[収録曲]
ベートーヴェン:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番~第10番
表示価格はすべて税込みです。
構成・文/高坂はる香
『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。