有馬温泉VS箱根温泉 第2回(全10回) 首都圏からのアクセス抜群、上質な温泉と自然がもたらす風光明媚な景観で、古くから東西の奥座敷として親しまれている箱根温泉と有馬温泉。コロナ禍を経て、より心地よく進化中の両地を訪問。「今」の魅力に迫ります。
前回の記事はこちら>> 金泉、銀泉が待つ関西の奥座敷「有馬温泉」
神戸市街地から30分の立地にありながら豊かな自然に包まれ、関西の奥座敷として親しまれてきた有馬温泉。金泉、銀泉で知られる日本最古の名湯と最新の空間を求め、もてなしの名宿を訪ねました。
陶泉 御所坊
「御所坊」に誕生した3〜4世代で過ごせるプレミアムスイートの内風呂。鉄分と塩分を多く含む茶褐色の金泉は、日本でも特異な泉質。長期滞在も叶える大人のための新客室
わずか1km三方の六甲山地の山あいに30軒ほどの宿が建ち並ぶ有馬温泉で、最古の歴史を持つ1191年創業の旅館「御所坊」。当代で15代目の主人・金井啓修さんは常に宿のありようを模索し、時代に合わせて革新を続けてきました。
昭和初期に建てられた木造建築や階段と廊下が複雑に入り組む内観はそのまま残し、有馬の歴史と神戸の異国情緒を融合させたノスタルジックな宿に30数年かけてリニューアル。
2022年秋には階段を使わずに利用できるプレミアムスイートの「TOU」と「GU」が増築され、わが家と宿を一つにしたような居心地のよい部屋が誕生しました。
「90代を最年長に3〜4世代でゆっくり過ごしてもらえることを想定した、すべてが部屋の中で完結し、長期滞在も可能な客室」。そう金井さんがいうように、広々としたリビングを中心に、和室やベッドルームを設け、源泉かけ流しの金泉と内風呂もつく、古今と和洋の趣を軽やかにバランスよく取り入れた最上級客室です。
さらに「GU」はサウナや子ども部屋、「TOU」にはバーカウンターや座った状態で金泉に浸かれる椅子を浴室に設け、旅人の高齢化や多世代化に応えたくつろぎも考えられています。
ダイニングテーブルを囲んでいただく料理は、スタッフが出入りする回数を最小限にとどめられるように組重やお膳で提供され、少量多種類の料理を自由に楽しめるうえに、好みやリクエストにも柔軟に応じてくれます。
プレミアムスイート限定の夕食。一の重は明石鯛のお造りと口取り5種、二の重は煮穴子の天ぷら、明石産鰆の麴焼き、豚角煮、味わい深い肉質とあっさりとした脂の但馬玄(たじまぐろ)のカツサンド。魚のあらでとったスープで味わう魚すき、鯛ご飯。温泉や建物の歴史、伝統を守りながらも、ホスピタリティには常に手を加え、現代風に更新。時にダイナミック、時に細やかに心を砕き、進化を続けています。
下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
陶泉 御所坊
兵庫県神戸市北区有馬町858
- 1室2名利用で1泊2食付き1名3万円~ ご紹介した「プレミアムスイートTOU・嶹」は同9万円~(ともにサービス料込み) 全16室 IN15時/OUT11時
撮影/角田 進 取材・文/西村晶子 ※宿泊料金には別途入湯税がかかる場合がございます。料理や食材内容は天候等の事情で変更になる可能性がございます。予めご了承ください。
『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。