藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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一重咲きの‘オスカー’と八重咲きの‘レッドプリンセス’、2種の赤いチューリップを束ねたウエディングブーケです。白やピンクのチューリップをウエディングブーケに使うことはよくありますが、赤だけというのは珍しく、記憶に残るブーケになりました。これほどストレートに春の季節感が伝わる花はない!
ほかの花にはないチューリップの個性的な花形は、ブーケでもアレンジでもアクセントとして効果抜群です。でも、それ以上に大きな魅力がチューリップにはあります。チューリップといえば、子供から大人まで誰もが春をイメージしますよね。これだけ広く春の花として認識されている花はあまり見当たりません。
チューリップが庭で咲くのは温暖地では3月下旬〜5月上旬。花の時期は決して長くないのですが、その開花期間は春という季節にぴったり合致します。それがチューリップ=春となる理由の一つではないかと思います。
切り花では国産のチューリップは12月初めから出回りますが、冬の間の贈り花に利用しても、どこか春につながるイメージが感じられます。
始まりの季節、フレッシュ感、明るく華やかな季節、わくわくした気持ち…。チューリップの存在が、そんな春の気分を贈り花にもたらしてくれるのだと思います。
甘いピンクがエレガントな八重咲きのチューリップは、フランス語で結婚を意味する‘マリアージュ’という名前です。どんな花色にも合わせやすく、しかも個性的な花形がアクセントとなり、とても使い勝手のよい品種です。花色や咲き方のバリエーションが豊富なチューリップは、蕾が確実に咲くので、ふんわりとほどけてくる過程を楽しめるのも魅力の一つだと思います。
日差しが当たると花びらが開くことはよく知られていますが、じつはアレンジするために短くカットしたあとも、茎が徐々に伸びてくるのをご存じでしょうか。全体が平らになるようにアレンジしても、翌日にはチューリップだけ頭ひとつ抜けている、なんてこともよくあります。そのせいで、アレンジの形も少し変わってしまうのですが、その変化がとてもおもしろいんです。
お届けしたあとも茎が伸びてくるので、贈り花でチューリップをもらったり、またご自宅にチューリップを飾った際には、ぜひ茎の長さに注目してみてください。
つややかなワインレッドが妖艶な雰囲気を醸す八重咲きチューリップの‘ブラックダイヤモンド’。かわいらしいだけがチューリップではありません。こんなに大人っぽくシックな雰囲気の花色もあります。これから卒業・入学のシーズンに向かい、とくに女の子への贈り花にチューリップを指定されるお客様が多くなります。
チューリップ=ラブリーという印象が強いのだと思いますが、個人的には渋めなパープル系や茶色がかるアンティークな雰囲気の花色が好きでよく利用します。
優雅さの中に妖艶さもあり、チューリップのあらたな魅力が楽しめますよ。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書
『大切な人への贈り花』も好評。
https://www.fleurs-tremolo.com 『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78 大切な人への贈り花』
誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。