有馬温泉VS箱根温泉 第6回(全10回) 首都圏からのアクセス抜群、上質な温泉と自然がもたらす風光明媚な景観で、古くから東西の奥座敷として親しまれている箱根温泉と有馬温泉。コロナ禍を経て、より心地よく進化中の両地を訪問。「今」の魅力に迫ります。
前回の記事はこちら>> 全国5位の温泉湧出量、多彩な17の温泉場を誇る「箱根温泉」
日本が誇る温泉観光地「箱根」の温泉発見は遡ること奈良時代。「惣湯(そうゆ)」と記録に残る温泉場とされているのが「湯本」です。
そして温泉場が現在のように17カ所に広がるまでには、様々な歴史がありますが、明治時代に開発されたのが「強羅」です。ここでは新旧温泉地の選りすぐりの湯宿をご紹介します。
強羅花壇(強羅)
箱根温泉の進化を牽引する名宿「強羅花壇」別邸「暁」の濡れ縁から、半露天風呂越しに見た庭。金閣寺垣を境に内庭の向こうには約500平方メートルの外庭が広がる。白砂の砂紋に石組という枯山水の清々しさに、奥にある植栽と芝生の石庭が季節の彩りを添える。見晴るかす明星ヶ岳までが借景に。春にはそこここで咲く桜が見事。湯は敷地内の3か所で湧く自家源泉を贅沢に使った掛け流しの温泉で、美肌効果の高い弱アルカリ性。
庭園と室礼の比類なき美。世界に誇るもてなしの真髄
閑院宮(かんいんのみや)の別邸跡地に昭和27年に創業した「強羅花壇」。
ハーフティンバー調の洋館は箱根の華麗な別荘文化を象徴する湯宿でしたが、平成元年、従来の旅館とは異なる大胆なプランで全面改装。
広大な敷地には洋館を基点に延びる120メートルの列柱廊、個室露天風呂に加えて、温水プール、フィットネスジムやスパと、旅館でありながら、世界の高級ホテルが備える施設を完備し、その名を世界に轟かせました。
そして2021年春、歴史の蓄積を余すところなく生かした最高級の貴賓室・別邸「暁」と「曙」の2室が誕生。
別邸「暁」が比類ないのは一軒家のような邸宅感です。室内と庭の桁外れの専有面積。内庭の先には広大な日本庭園が続き、一幅の絵画のような佳景が広がります。
また日本建築の粋を集めた室礼も格別です。聚楽壁、京唐紙の襖、飾り金具に格天井と、贅を尽くした伝統建築を暮らすように体験できるプライベート空間で、一歩も外に出ずに満ち足りる極上の「籠もり感」は、ここならではの醍醐味といえるでしょう。
和の意匠美が凝縮された6畳の広縁。勾配のある葦簀(よしず)張りの棹縁(さおぶち)天井。筬欄間(おさらんま)から漏れる陰影が美しい。正座せず使えるよう足入れできる文机には硯と蒔絵の文庫箱。中にはレターセットが用意されている。
食事は国内外の賓客の心を捉えてきた料理長・小林誠さん入魂の懐石料理が、朝も夕も部屋で供されます。蟹や鴨といった冬の食材を匠の技で表現した逸品尽くしで、奥深い滋味に溢れています。
美湯に始まり、室礼や美食に加えて、滞在を記憶に残るものにしてくれるのは、ゲストの過ごし方に合わせたさりげない心遣い。名宿には、もてなしの真髄が息づいています。
深く心身を癒やす「KADAN SPA」
別邸「暁」のすぐ下、本館1階フロアに2022年5月、トリートメントルームが3室誕生し、「KADAN SPA」としてリニューアルオープンしました。
内装には檜がたっぷりと用いられ、開口部が少ないため、静寂な空間でじっくりと施術に集中することができます。なかでも人気なのは「カダン・ボディ」。高濃度酸素を含有した浸透性の高いオイルを用い、巧みなハンドマッサージで、全身を深部からほぐしてくれます。予約制「カダン・ボディ」は60 分2万900円~。
上段がボディの施術で使われるオイル“O2クラフト”。中段の3種は“SENSAI・フェイシャル”(75分1万9800円~)の施術で用いられる。SENSAIは純国産の小石丸シルクから着想を得たブランドでローションとクリームは客室のアメニティにも。
Information
強羅花壇
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
- 1室2名利用で1泊2食付き1室12万6000円~ ご紹介した「別邸『暁』」は同39万1000円~(ともにサービス料込み) 全41室 IN15時/ OUT11時
撮影/本誌・坂本正行(箱根温泉) ※宿泊料金には別途入湯税がかかる場合がございます。料理や食材内容は天候等の事情で変更になる可能性がございます。予めご了承ください。
『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。