寒川 一さん(さんがわ・はじめ)1963年香川県生まれ。災害時に役立つアウトドアの知識を伝えるアウトドアライフアドバイザーで焚火の伝道師。三浦半島を拠点に「焚火カフェ」を開催している。著書に『焚き火の作法』『「サボる」防災で、生きる』『新時代の防災術』など。写真左は妻のせつこさん。
私たちは湘南で「焚火カフェ」も営みながら、日々ア ウトドアの魅力を皆さんにお伝えしています。
さまざまなワークショップのなかでも、多くのかたに喜ばれているのが「スタディトレッキング」です。ハードなプランではなく、鎌倉を歩き、自分たちが見つけた枝や水を使って、缶詰やレトルトなどで温かいランチを作るというコース。
ポイントは「火」と「水」をどうするか。実はこれは防災においても何より大切な点なのです。アウトドアのスキルや道具は防災にとても有効です。
災害への備え、というとまず備蓄が思い浮かびます。突然の災害ですべてのライフライン、電気、水道、ガ スが止まってしまった――。もちろん備蓄があれば安心 です。
しかし問題は、ライフラインがいつ復旧するか全くわからないこと。明日なのか1か月先なのか。たとえば1日一人3リットル必要な水を家族の人数分、復旧するまで の未知の日数分を備蓄するのは、現実的には困難です。
復旧の目途、先が見えないというのはメンタルにもかな りこたえるもの。手持ちの水の配分も検討できない。人間関係にも暗い影を落とします。
そこで備蓄の水やカセットコンロを使いながらも、いかにリカバーできるか、補充できるか、が重要になります。
まず水においては、準備すべきは浄水器です。バスタブの水をフィルターなどで漉してから、浄水器を通し、 煮沸をすれば飲用も可能です。多摩川の水でもトライしてみましたが、大丈夫でした。日常的に、家の周囲にある水のポイント――たとえば川や湧き水――を見つけ ておくのもいいかもしれませんね。
そして火。カセットコンロとボンベに加えて、ネイチャーストーブをおすすめしています。小枝や牛乳パッ ク、ティッシュなど、燃料はその時点で「調達可能なも の」でOK。雨の日はカセットコンロ、晴れていたらネイチャーストーブを使用。熱源が異なるアイテムを準備するのも肝です。
その日に備えて、という気持ちも大切ですが、もっと気軽に戸外でお湯を沸かしてお茶や軽食を楽しんでみるところから始めてみてはいかがでしょうか。太陽の下で過ごすのは、とても気持ちいいもの。それを契機に焚火やキャンプへの興味が湧いてきたら、私たちも嬉しいかぎりです(談)。
まずは火、水、電気の確保を。寒川さんおすすめ防災に役立つアウトドアグッズを「フォトギャラリー」でチェック↓↓