話題の新星ピアニスト イム・ユンチャン 魔法の音 最終回(全3回) クラシック界に出現した若き天才イム・ユンチャンさん。2022年6月、第16回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにおいて史上最年少の18歳で優勝。ファイナルの演奏曲ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」はYouTubeで配信され、2022年12月末で917万回を超える再生回数となるなど、今、熱い注目を集める時の人です。ピアノ・リサイタルのため初来日したユンチャンさんに単独インタビューが実現。ピアノの前での情熱ほとばしる姿とはまた違う、ピュアな青年の素顔も魅力的でした。
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写真/Lisa-Marie Mazzuccoイム・ユンチャンさん(Lim Yunchan)2004年3月、韓国始興市生まれ。韓国芸術総合大学在学中。7歳でピアノを始め、翌年ソウル・アーツ・センターの音楽アカデミー、13歳で韓国芸術英才教育院に合格。2022年12月に発表されたニューヨーク・タイムズ紙の「今年の10大クラシックベストパフォーマンス」にも選出。「いずれ、子どもの施設や音楽に触れる機会が少ないかたがたのために演奏するのが夢です」。Q 家族構成を教えてください。
A 両親、僕、中学3年生で15歳の妹の4人家族です。
Q ユンチャンさんにとってご家族はどんな存在ですか?
A 両親は音楽をやってきたわけではなく、特に詳しくないのですが、ピアノという未知の世界に僕が入門するときも疑わず支えてくれたこと、音楽に専念できるような環境を作ってくれたことに、本当に感謝しています。妹も、ひたすらピアノを弾いてばかりでちっとも遊んでくれない兄のことを、いつも応援してくれているので有難いです。
Q イケメンだといわれていますね。どなたに似ているのでしょう?
A 自分ではそう思っていませんが(苦笑)、親にはそういわれたことがあります。外見は母に似ているとよくいわれます。性格は家族皆、それぞれですね。
Q 好きな色は?
A 世界のあらゆる色が好きです。
日本公演で披露したギボンズ「ソールズベリー卿のパヴァーヌとガイヤルド」。上を向き目を瞑って演奏するなど、曲によってまったく異なる姿を見せてくれた。Q 師匠のソン・ミンス先生はどのような存在ですか?
A ピアノに関することはもちろん、人間が学べるすべてのことに影響を与えてくださるかたです。僕が何か大事なことを決める際にはいつも賢明なアドバイスをくださり、ギリシャ神話や宇宙の話、昔の野球選手の話など、僕にとって未知のジャンルの学問についても教えてくださいます。本もいろいろ貸してくださるのですが、最近では法頂(ポプチョン)和尚という韓国で有名なお坊さんの『無所有』というエッセイ集が印象的でした。
Q 好きな日本のキャラクターがあれば教えてください。
A 『となりのトトロ』(宮﨑駿監督作品、スタジオジブリ制作のの長編アニメーション。1988年公開)のトトロです。実は10歳以降、ドラマも映画もしっかり観たことがなくて。トトロは、最初から最後まで観たと自分が記憶している唯一の映画なんです。10年前なのでうろ覚えではありますが、とにかく可愛くて和み、ネコバスも可愛かった印象があります。
ピアノ・リサイタルのため初来日して数時間後のご対面。「インタビューは年に数回しか受けてこなかった」と最初は緊張気味だったが、子どもの頃好きだった『となりのトトロ』のトトロを抱えて、ほっと和みの表情。Q 公演がないときはどう過ごしていますか?
A 次の公演の練習をしています。目覚めるとまず、ハノンのスケール(ハノンの教本、39番)を練習して指をほぐすことから始めます。
Q 音楽の気分転換としては何をしていますか?
A 音楽を聴きます。ひとつはクラシックで、すべてのジャンルを聴いています。もうひとつは1980年代のK−POP。ユ・ジェハさんというシンガー・ソングライターがとても好きなんです。1987年にアルバム『愛しているから』を出されて、その3か月後に交通事故で亡くなってしまったのですが、K−POPの新しいジャンルを作ったかただと思っています。
〔特集〕話題の新星ピアニスト イム・ユンチャン 魔法の音(全3回)
撮影/鍋島徳恭 通訳/岡田恩圭 取材・文/小松庸子
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。