365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
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神奈川県の鎌倉のお寺の庭で咲いていたスミレ。淡い紫色は日本に自生するタチツボスミレ。濃い紫色はヨーロッパ原産のニオイスミレ。ニオイスミレは12月から咲き出します。■属科・タイプ:スミレ科の宿根草
■花期:3月下旬〜5月
■草丈:10〜15cm
自分が暮らす街のスミレマップを作りたい!
暖かいエリアではもうスミレが咲き出しています。スミレというと山野草のイメージで、近所の散歩では見られないと思っている方も多いようですが、そんなことはまったくありません。個人邸の外周りの花壇より、むしろ駐車場の隅っこや空き地で咲いていることがよくあります。道路脇の舗装の切れ目から育って花を咲かせる姿も見られ、華奢に見えて意外に強くて丈夫な性質であることに驚かされます。
スミレの仲間は北半球の温帯地域を中心に約400種が分布し、日本で自生する野生種は80種あまりに及びます。各地で見られる野生種の中でいちばん多いのがタチツボスミレで、淡い紫の花、ハート形の葉が特徴です。スミレには葉が細長く深く裂けたタイプもあります。
どのスミレも繁殖力が旺盛で、タネを飛ばして増えるほか、ランナーと呼ばれる地上を這って伸びる茎でも増えていきます。ちなみに道路の舗装のすき間から育っている場合は、アリによってタネが運ばれてきた可能性が強いそうです。
じつはスミレのタネにはアリを誘引する物質が含まれているそうで、さまざまな手段を講じて種を存続させようというスミレのたくましさには本当に感心します。
植物画が得意なイラストレーターさんの個展を訪ねた際に、スミレマップという作品を見てワクワクした気持ちになりました。彼女が暮らす街の手描きの地図の上に、どこでどんな種類のスミレを見つけたかを描き込んだもので、こんなにたくさんのスミレが咲いているのかと驚きました。花色や葉形の違いに気をつけながらスミレを探して歩いているそうで、その様子を想像するだけで楽しい気分になりました。
私は絵を描くのは苦手なので、スミレを見つけたら写真を撮り、いつどこで見つけたかを写真データに書き込んでおくようにしています。その写真をプリントして近所の地図に貼り付け、いつか私の街のスミレマップを作りたいと考えています。
タチツボスミレの株姿をご覧ください。丸みのあるハート型の葉が特徴です。栽培の難易度
日当たりがよく、水はけのよい土壌に植えます。植えつけ時に元肥を施せば、追肥の必要はありません。水やりは雨まかせでかまいませんが、土壌がからからに乾燥したときには、株元にたっぷり水やりします。終わった花がらをそのままにしておくと、タネがつき、それを採取してタネから増やすこともできます。耐寒性が強いので、温暖地ではとくに防寒をしなくても冬越しします。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。