藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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繊細な花穂がブルーに染まったアスチルベです。ブルースターとスズランと合わせ、ミントを加えて束ねました。小学生になったお孫さんへ、お祖父さま、お祖母さまからのお祝いの贈り花です。佐世保発!世界を魅了するアスチルベ
日本で生産された花が世界で人気になることはよくありますが、アスチルベも欧米をはじめとする世界各国で、大人気となっているのをご存じでしょうか。そのアスチルベを生産しているのは、長崎県佐世保市の「JAながさき西海」のアスチュルベ部会です。
切り花のアスチルベといえば花色は淡いピンクかオフホワイト。そんな概念を見事に覆したのが「JAながさき西海」のアスチルベです。目の覚めるような鮮やかなブルー系に染められたアスチルベが世に出たのはもう20年ほど前のこと。初めてそのアスチルベを見たときには、あまりの美しさに衝撃を受けました。
それまでは淡いピンクか白しか出回らなかったのですが、ふわふわの花穂をつけるアスチルベはブーケでもアレンジでも脇役としてよく利用する花でした。そのアスチルベにブルーが加わったとなれば、どれだけ花合わせの幅が広がることか!
「ただの脇役とはもう呼ばせないぞ〜」という生産者さんたちの熱意が伝わるインパクトの強さでした。
濃淡ブルーのアスチルベは染め、淡いピンクは天然色。どれが染めだかわからないほど自然な色合いです。「JAながさき西海」の染め花は、それまでとは異なる特殊な技法で行われていて、それについては企業秘密だそうですが、花を見れば一目で違いがわかります。花は鮮やかに染められていても、葉や茎は自然の色のまま残っているからです。だから、水に挿しても色落ちして水が濁ることはありません。染めでありながらナチュラルさを損なわないことが、国内にとどまらず世界で人気となっている大きな魅力だと思います。
染めのアスチルベ誕生から20年の間に、どんどん技術は進歩し、また、部会内でその技術を習得する人が増え、現在では年間120万本生産するうちの約40%を染めて出荷できるようになっています。ブルー系のほか、ラベンダーやチェリーピンク、アプリコットなど花色も増え、ブラウンやグレーなどシックなニュアンスカラーも生産されるようになっています。
アスチルベはもともと花持ちがとてもよく、贈り花でも使い勝手のよい花です。染めではない淡いピンクもとてもかわいらしく、白花の清楚で優しい雰囲気も大のお気に入りで、私の店にアスチルベがない日はありません。
あるとき、SNSでパリの花屋さんのブルーのアスチルベを使った作品を見つけました。すぐに佐世保のアスチルベだと気づき、自分のことのようにうれしくなると同時に、誇らしい気持ちを感じました。「JAながさき西海」のアスチルベはほぼ一年中出回りますが、とくにこれから5月くらいまでが最盛期となります。美しい花色のアスチルベをぜひ大切な方への贈り花に利用してみてください。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書
『大切な人への贈り花』も好評。
https://www.fleurs-tremolo.com 『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78 大切な人への贈り花』
誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。