私の最高レストラン66 第10回(全19回) 美味なる思い出は、人生の彩りとなります。創刊66周年を記念し、家庭画報ゆかりの著名人の「人生の思い出に残る」美食処66軒を紹介します。
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道なき道を切り拓き、常に技を磨き、心震わす一品を生み出し続ける料理人たち。特集第10回からは世界中の料理人、美食家から一目を置かれ、今、まさに円熟の時を迎える料理人をクローズアップします。
ガストロノミー・ジョエル・ロブション
関谷健一朗さん
トリュフをおいしく食べるために考えられた「アーティチョークと黒トリュフのミルフィーユ仕立て」。鶏のコンソメのゼリーと、赤ワインビネガーのクリームを添える。削ぎ落とした要素で、トリュフの馥郁たる香りを最大限に引き立てる。日本人初の快挙!フランス料理界最高峰のM.O.F.を受章
関谷健一朗さん(せきや・けんいちろう)1979年千葉県生まれ。2006年よりパリ「ラトリエ ドゥジョエル・ロブション」スーシェフ。10年同東京店のシェフとして帰国。21年「ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」のエグゼクティブシェフ就任。22年日本人初のM.O.F.料理部門受章。比類なき挑戦で認められた最高の技術をダイニングで
フランス版人間国宝ともいわれるM.O.F.の表彰が始まったのは1924年。それから100年近くに及ぶ歴史を経た2022年、料理部門で初めて日本人の受章が発表されました。史上初の偉業を成し遂げたのは「ガストロノミー“ジョエル・ロブション”」のエグゼクティブシェフ、関谷健一朗さん。
「フランス産ほろほろ鳥胸肉ともも肉のシューファルシ シャトーシャロン風味」。ほろほろ鳥の胸肉はローストに、もも肉はフォワグラとともにサボイキャベツで包んでいる。2018年、権威ある世界料理コンクール「ル・テタンジェ」で世界一に輝き、次の目標にしたのがM.O.F.でした。初挑戦で、見事タイトルを獲得しましたが、中には10年以上挑戦し続けている人もいるほどの狭き門。
試験内容はフランス料理の歴史や文化、財務や経営に至るまで幅広く、調理技術はもちろん、フランス料理界を代表する人物としての資質が問われます。4月に筆記と実技、9月に4時間の実技、11月の最終選考は5時間の実技。良い食材を手配できるかも評価されます。受章したことで、フランス料理界の大御所たちも、対等な「家族」として受け入れてくれたと語ります。
「フランス料理の伝統と格式を未来につなぐだけでなく、自分自身がそれの一部であるという意味で、責任重大だと思っています」。感謝してもしきれないのは「ロブションさんにお世話になったから」と、見返りも求めずにサポートしてくれた現地の人たち。
「ロブションさんはもういないけれど、心の中にはいつもいるんです。彼が愛したフランス料理を守り、次の世代につなぐ。それが私の使命だと思っています」。
恩師ロブション氏と。「料理は愛」という、師が人生をかけて追求した哲学とフランス料理の卓越した技術を今日も守り続ける。下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。 Information
ガストロノミー・ジョエル・ロブション
東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL | 03(5424)1347 |
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営業時間 | 11時30分~12時30分(入店、土曜・日曜・祝日のみ) 17時30分~20時(LO) |
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定休日 | 無休 |
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- 昼のコース2万3000円~、夜のコース2万8000円~ 要予約 個室3室
撮影/阿部 浩 取材・文/仲山今日子
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。