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Kバレエカンパニー「New Pieces」公演 山本康介さんにインタビュー

2018.02.26

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舞台にて、ビントリー氏とリハーサル中の一コマ。

山本:僕が子供の頃、「狐の手をまず作って、そこからリラックスさせなさい」と言われて、「どうしてですか?」と聞き返したんです。嫌な子ですよね(笑)。でも先生はわざわざ古い本を出してきて、見せてくださったんです。


「昔のヨーロッパの人は、手に何してる?」「指輪」「手首に何してる?」「腕輪」「だから、手を動かした時にちゃんと見えるように、落ちないように、バレエの手はこうなったの」と教えてくださった。それがずっと頭に残っていて、今僕が教えるようになっても真似しているんです。

真摯で知的、そして相手に寄り添う指導は生徒の一生を左右する、と言っても過言ではないと思わせるエピソードです。

そして、語ってくれた山本さん自身の指にも、キラリと光るダイヤモンドが……「ある本で、ダイヤモンドは自分を守ってくれると読んで」身に着けるようになったとのことですが、10年間在籍したバーミンガム・ロイヤル・バレエを退団するときも、恒例となっている団員たちの記念のプレゼントに何が欲しいか聞かれ、ダイヤモンドをリクエストしたそう。

山本:お餞別にそんなものをいう人、いないですよね。冗談のつもりだったのに、引退公演のカーテンコールで本当に、芸術監督のデイヴィッド・ビントリーがケースを手に現れたのでびっくりしました。そしてこの石が、「感傷を超えて新しいところに行かないと」という気持ちにしてくれたんです。



『くるみ割り人形』終演後、ピーター・ライト卿を囲んで。

それからおよそ7年。現在は東京をベースに活躍する山本さんですが、振付家として目下のところ取り組んでいるのが、2018年2月にKバレエカンパニーの「New Pieces」公演で初演される新作です。音楽は「タイスの瞑想曲」(マスネ作曲)、「同バレエ団のプリンシパルで付属のバレエ・スクールの校長でもある荒井祐子さんの魅力が、同じくプリンシパルである宮尾俊太郎さんをパートナーに際立つ作品を」ということで、芸術監督の熊川哲也さんから直々に依頼がありました。

バレエ作品、とりわけストーリーのない作品で、振付家はどのようにイメージを作り上げていくのでしょう?山本さんは「今回のように音楽を指定されてきて作る場合は、いかなる状況下でもその曲を聴く」ことから始めます。

山本:精神的に苦しいとき、酔っ払っているとき、晴れやかに目を覚ました朝など、自分のいろんな感情とともに聴き続けていると、曲の中に「ここ」というお気に入りの部分ができて、振りがだいたい決まってくるんです。たとえば、花火のようにその場所で湧き上がる動きなのか、嵐のように大きく移動していくのか。では、そこをしっかり見せるためにはどうしたらいいかと、逆算して全体を作っていきます。

そうすると、自分の中でこだわる部分、そうでない部分が分かれてくるので、ダンサーを自由にさせてあげることもできる。僕自身がダンサーだった頃も、がんじがらめに作られるのが嫌いだったんですね。

音楽を立体感、あるいは遠近感をもって聴く、ということでしょうか?

山本:たとえばバランシン、ロビンズ、アシュトンといった音楽性にすぐれた振付家の作品では、曲の印象的なフレーズでは必ず「これだ!」という動きが出てきますよね。そして最後に曲と振付が一緒に盛り上がる。だからこそダンサーもお客さんも、楽しめるのだと思います。

振付は「ちょっとお料理みたいですね。完成したところを想像しながら、下ごしらえして、作って、最後にちょっと整える。」という山本さん。熊川さんからは「織姫と彦星のように」とのコンセプトを示されたそうですが、瞑想が銀河へと広がっていくような、美しく神秘的なデュエットとなることでしょう。当日が楽しみです。

山本康介/Kosuke Yamamoto

バレエダンサー・演出家
美佳バレエスクールにおいて山口美佳に師事。1996年、13歳という若さで名古屋世界バレエ&モダン・ダンスコンクールにおいて審査員特別賞、ポーランド国立オペラ劇場からニジンスキー賞を受賞。1998年英国ロイヤル・バレエスクール入学。主席で卒業しニネット・デ・ヴァロワ賞も受賞。2000年バーミンガム・ロイヤル・バレエ入団。数々の作品でプリンシパル・ソリストを務め、バレエ団の公演においても振付を手がける。2010帰国後は、ダンサー、演出家、指導者として活動し、『プレミアムカフェ』(NHK)『第45回ローザンヌ国際バレエコンクール』(NHK)の解説者としても出演。2016年には、日本の芸術文化に寄与するためアポロンアーツ合同会社を設立。
撮影/小林秀銀 取材・文/長野由紀 撮影協力/Longrain 編集/宮本珠希
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