伝統工芸の美しい手業をテーブルに 漆器と豊かに暮らす 最終回（全11回） 2022年9月に開催された第57回「全国漆器展」。美術工芸品部門、産業工芸品部門の2部門に、全国の漆器産地から数多くの力作が出品されました。各産地では古来の技法を大切に守りつつ、現代の暮らしにフィットする新しい器を生み出しています。この年に新設された「家庭画報賞」を含めた入賞作品を中心に、日々の暮らしを豊かにしてくれる漆の器を紹介します。
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「保存・抗菌」――重箱を普段使いにも
ライフスタイルの変化や、漆芸の技術革新により、新たな漆器も誕生しています。
ここでは「スタッキング」「色と柄」「一器多用」「保存・抗菌」のキーワードをもとに、現代の暮らしに使いやすく、フィットする魅力的な器を紹介します。
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利山（川連〈かわつら〉漆器）
イタリアのデザイナーとのコラボレーションの際、コンポート皿のように日々のテーブルに出しておける漆器をとの提案で生まれた。惚れ惚れするほど美しい溜塗で、黒色から中塗りの赤が透けて見え、漆が本来持つ美が感じ取れる。17×17×高さ17.5センチ、5万600円。テーブルクロス／アクセル ジャパン漆は、本来非常に堅牢で、水分や熱、酸やアルカリにも強い耐久性があります。断熱効果があるので、熱いお茶を入れた器を持っても熱くないし、保温力もあって冷めにくい。かねてから、本漆塗りのお弁当箱は、夏でもおかずが傷まないと伝えられてきましたが、金沢工業大学の小川俊夫教授が、科学的に実証。漆膜の抗菌効果と防黴（ぼうばい）性を明らかにしたのです。
利山TEL：0183（42）2410（湯沢市川連漆器伝統工芸館）
【日本経済新聞社賞】
二段丸重 どら塗
山田早紀子（高岡漆器）
硬い漆を地に塗って絞って模様にし、乾いてから朱漆を塗り、透き漆を何度も上塗りする。凸凹した表面が特徴的で、使って傷ついても味になる実用の器。金粉を混ぜて塗っているので、次第に透けて金が発色するのも醍醐味。径18.7×高さ10.8センチ、4万9500円。大腸菌溶液をプラスチックと漆に垂らして24時間後、1ml中に20万個存在した菌が、プラスチックには約6万個、漆器ではほぼ死滅していました。漆の主成分、ウルシオールの優れた抗菌作用です。うるし振興研究会の検証でも、漆は抗菌に加え抗ウイルスの効果も確認されました。
重箱は正月だけでなくパンやクッキーなど食品保存にもってこい。脱プラスチックで、もっと積極的に漆器を活用したいものです。
山田早紀子富山県高岡市二番町32
TEL：0766（24）2659（氏家漆器）
表示価格はすべて税込みです。 撮影／武蔵俊介 スタイリング／阿部美恵 取材・文／片柳草生 取材協力／日本漆器協同組合連合会
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
