天野惠子先生のすこやか女性外来 第10回(04)日本の女性医療、性差医療の先駆者で、ご自身の更年期体験も山ほどお持ちの、天野惠子先生の連載「すこやか女性外来」。今回は、天野惠子先生が推薦する、全国・女性外来を紹介します。
前回の記事はこちら>> 【天野惠子先生が推薦】全国・女性外来を訪ねて
西松園(にしまつぞの)内科医院 院長齊藤惠子先生
●前回の記事
動悸・息切れが起きたときの対処法や予防法“NOといえない人”が心身症になりやすい
心理療法で上手な自己主張をうながす
齊藤惠子先生(さいとう・けいこ)弘前大学医学部卒業。同大学医学部附属病院内科、盛岡鉄道病院主任内科長を経て、1985年西松園内科医院を開業。専門は消化器疾患、心身症。企業と契約し産業医としても活動。交流分析や自律訓練法を用いた心身医学的アプローチで内科疾患に対応する。日々の診療風景をテーマにした俳句作りが趣味。ストレスによる体の不調を「交流分析」の手法で治療
開業して40年近く。内科医の齊藤惠子先生のもとには、家庭や職場で心労を抱え、挙げ句に体調を崩した人々が男女を問わず訪れてきます。
待合室には患者向けにたくさんの書籍が置かれている。診察室のデスクには消化器疾患や女性医療の専門書。症状だけでなく背景にあるストレスや性格的要因にも目を向け、一人一人の状況に応じた心身両面からの治療を行うのが大きな特徴です。
初診時に行うメンタルヘルスチェックリスト。全部で22の質問への回答をもとに治療法を探る。ストレスの影響が体の不調に現れるいわゆる心身症の症状は、食欲不振、肩こり、うつ状態、不眠などさまざま。初診時にメンタルヘルスチェックを行い、ストレス度の高い場合はカウセリング治療で対応していきます。
このとき主に用いるのが「交流分析」。エゴグラムという診断テストを行って性格を5つに分類し、行動や思考パターンの傾向を明らかにして対人関係を改善していく心理療法です。
「私もOK、あなたもOK」の対人関係を目指す
エゴグラムでは、NOといえず、無理をしても周囲の期待に応えたいと頑張る傾向がみられます。
「家族の都合を優先し自分は二の次、仕事も家事も一人で抱え込む日々のストレスが被害者意識となり、身体症状に現れる女性は多いですね。私はお話に耳を傾けながら、相手の意向も受け入れ適度に自己主張もする“私もOK、あなたもOK”の対人関係を築けるよう導いていきます。自分を大事にできるようになると不思議と周囲への不満が消え、相手の長所も見えてくるのです」(齊藤先生)。
院内に飾られた知人書家の書。外科医だった父はクリスチャンで、讃美歌の歌詞から「恵」の字をとり「惠子」と名づけた。医療現場の環境改善にも取り組み、働く女性を長年支えてきた齊藤先生。
「外科医だった父はマニラの野戦病院で戦死しました。志半ばで逝った悔しさを引き継ぐ覚悟で、患者さんに寄り添う医療を心がけています」。
撮影/菊地正則 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。